先日、ついに新しい概念のアルツハイマー型認知症に対する治療薬の承認についての報道がなされました。その情報については、もちろん報道もですが、メーカーさんの担当者さんからも商品名の公表とともにメールをいただきました。
アルツハイマー型認知症の治療においては、新しい治療の幕開けになりますね。
現在認知症といえば、統計上過半数においてアルツハイマー型認知症といわれているため、一般常識としては、「認知症」と言えば、「アルツハイマー」といった感じでとらえられ、認知症の症状についても、ほぼ「アルツハイマー」の症状が中心に語られることが多い現状があります。
物忘れ症状を軸に時間的概念が壊れてきたり、場所がわからなくなったり、日常生活の中で当たり前にできていたことがわからなくなったりと…順々に進行していく疾患として、認知症=アルツハイマーについての認識があるでしょう。
ごまウシのはてなブログのアカウント(アドレスにある名称)のAlois-Alzheimerはまさにアルツハイマー博士の名前であったりします。このアルツハイマーの治療に新しい治療概念が今回登場するわけです。
新しい治療概念としては、「疾患修飾薬」というものです。
今まで発売されているアルツハイマーの治療薬は、病気そのものの進行を厳密な意味では抑制することはほぼ不可能な治療薬で、病気が進行する中で脳神経系に刺激を与えて減ってきた神経に対して一つ一つの神経が能率よく動けるように減った神経を刺激続ける治療薬であったりします。
あくまで病気に対する「対症療法」というものです。
しかし、今回発表された治療薬は、「対症療法」としての治療薬ではないのです。
今回登場した治療薬は、アルツハイマー病で神経を壊してしまう毒性のある老廃物を免疫機能を活用して駆除するという治療薬です。そのため、病気の根本的な神経障害性の老廃物を取り除くことにより、病気そのものの進行を抑制するものです。
病気そのものの機序に介入する治療薬は、身体疾患においては、すでに日常的に存在はしているものの、アルツハイマーにおいては初めての登場となります。
マスコミ報道では、夢のような素晴らしいお話で登場してきている部分はありますが、新しい「疾患修飾薬」という概念のものなので、ごまウシとしても大いに期待したいところがあるのですが、素晴らしい面だけではなく、実は課題というものも存在していることは確かです。
課題として一つ言えることは、治療費の高さでしょうか。
そして次の課題としては、この免疫に働きかける治療薬は、内服薬ではないことですね。
そして、病状が進行した状態では、薬効の証明が不十分であるため、あくまで初期の初期にしか適応されない(薬価に関連した医療費高騰も避けたい国の考えもありますが)ということで、治療の適応に関門が存在することなどなど。
そのため、治療を求める方の全員にこたえられるとは限らないということが実情です。
治療を受けられるかどうかについては、次のような関門が考えられます。
適性診断のために、精密な検査を必須としていること、治療薬を処方できる医師が限られることになること、適応は「認知症」ではなく「アルツハイマー型認知症」に限られていること、そして、認知症としての段階がごく初期であることなど。さらには、2週間に1回高額な治療薬を受けることができる時間的資金的な状況を満たせる方…。
といった感じで、考えられる関門はいくつもあります。
治療を受けたくても、目の前の担当医から「あなたは治療できる該当者ではありません」なんて絶望的な言葉ではねのけられる可能性が存在するのがこの新しい治療薬になります。
はねのけられてしまった方からすると、期待に胸をときめかせて受診したのに、一言で地獄に突き落とされるような…。
このような恐ろしさが普段、そのような告知をあまりしてこなかったごまウシも含めた、専門医の中で繰り広げられることになります。告知の行い方のコツだけでなく、配慮の仕方など…不慣れな担当医がこれから、そのようなことと向き合うことになる…。
波乱万丈な診療となりそうな感じもありますが、せっかくなので、新しい治療薬を上手に活用しながら、多くの方を癒して
いけたらと思うところですね。