本日は、通常の業務の合間に製薬メーカーさんと面談する機会がありました。以前には若干お世話になったことがある製薬メーカーさんですが、ごまウシの専門としている診療科の創薬は久しく行っておらず、この度、本当に久しぶりに関わって発売に至ったという事で、ご挨拶いただく事となりました。
今回のお薬は、既に発売をされている医薬品を改良し、貼り薬にしたというものでした。
高齢者へ使用する薬は、多種多様ではあるものの、一番問題になってしまうのは、内服そのものが難しくなった場合にそれでも継続が必要な場合にどのように投薬するのかという事です。以前ですと、その場合は、座薬か点滴か注射と言った手法くらいしかなく、ごく微量であれば、点鼻であったり、吸引であったりというものがありました。ただし、点鼻と吸引については、内服困難な肩はそもそも既に難しくない場合も多く、実用的でない場合も多いため、同時に選択が難しくなることが多かったです。そういった中で、昔かあるものの、手法として見出されていなかったのが貼り薬です。
貼り薬と言えば、痛み止めの湿布程度しか一般的にはイメージはないと思われますが、最近は神経系の薬で貼り薬をちらほら見かけるようになりました。パーキンソン病の貼り薬、そして今回情報提供頂いたのはアルツハイマー病の治療薬です。
貼り薬のメリットとしては、消化管を経由しないので、胃腸に刺激を与えてしまう医薬品は経皮吸収でそのトラブルを回避しやすくなると言うところと、内服すると必ず肝臓を経由するため、肝臓で分解されてしまうことがありますが、貼り薬は肝臓を経由しない点では、注射や点滴でしか使用できない医薬品の投与方法につながることもあります。
一方でデメリットは、貼った部位のかぶれなどのスキントラブルが最も多いのですが、一方で、経口内服と同じような消化器症状が出てきてしまったり、剥がれてしまったら、十分な効果を発揮する前に中断となってしまうと言う事でしょうか。そして経皮吸収なので皮膚の状態によって効果発現が変化する恐れがあることでしょう。
さて、ごまウシは、貼り薬の処方はまあまあしている方ではあるのですが、その中で疑問を感じるところをメーカーさんにぶつけることをしているのですが、今回初めて精神系の貼り薬を作ったメーカーさんには酷かなと思いながらも素朴な疑問を投げてみました。
「食べてしまったらどうなる?」
これが貼り薬を作ってくれたメーカーさんに投げかける定番の質問だったりします。
「食べるわけないじゃない!!」って言うのが一般的な多くの方のご意見だと思います。いぢわるな質問じゃないかと思われるかもしれませんが、ごまウシの診療している疾患は、「認知症」です。
今回発売となった貼り薬は、アルツハイマー型認知症に対する適応ではありますが、高容量の貼り薬まで用意をしてあったため、「重度認知症」に陥ったアルツハイマー型認知症の方へも適応があるという事になります。
認知症は、一般的には生活機能障害と言われている症状が存在しますが、その機能障害は重度になればなるほど社会的な行動障害にとどまらず本能的な行動の障害に発展していきます。例えば、食べ物に注目してみると、「口の中に食べ物を入れて食する」と言うことが壊れてしまうことがあります。そうすると、口に中に入れたものを食べ物として認識できなくなることが出てきてしまうと、食べ物を食べることができずに吐き出してしまうと言う事態が発生します。認知症としては最終段階という風にごまウシは捕らえていますが、この症状が出現すると、いわゆる拒食ですので、一気に衰弱して言ってしまいます。
しかし、一方で、食べ物という概念が広がってしまうこともあります。それは、何でも食べてしまうという現象です。老人ホームなどでトイレットペーパーを食べていたなんていうお話を耳にする事があるかもしれませんが、この「異食」が重度認知症では登場することがあります。ごまウシが驚いたことに、職員のスリッパを食い散らかしていた方がおられたのはさすがにたまげましたが、何でも食べてしまうのです。
このようなお話をすると、ごまウシがメーカーさんに投げかけた質問の重要性が分かって頂けたでしょう。
そうです、貼り薬の一番大きな欠点は、そこに貼り薬がとどまり続けるところです。届かない背中に貼ったって関係ありません。違和感があれば、壁にこすりつけたりベッド柵を使ったりと…時々ベッド策に貼り薬が貼ってあるのを見つけることもあるくらいです。
その貼っている薬を異食をしてしまう方が目にしたら、どうなるでしょう?
「食べてしまったらどうなる?」
この質問に到達するわけです。
結論から申し上げると、不適切な薬の使用方法は当然治験などではチェック入れていませんので、答えは存在しないわけです。問題提起をしたからと言って人体を使って貼り薬を飲ませることはできません。
なので、紙面上のアセスメントをしてあるかどうかを質問していることになります。
新しく参入したメーカーさん、これに対する答えをそれなりに用意することができるでしょうか?
いぢわる
ではなく、楽しいお付き合いが出来ればと思っております。