こんな言葉を使うことは最近全くありませんが、最近あるドクターから患者さんの相談を受けながら、一人の患者さんに複数のドクターが関与することでより一層安全を担保されている事実を知ることができました。
ごまウシの勤める病院には、約130人ものドクターが所属しています。ドクターの特徴は、職人気質がとても強いことが言えるため、「オレ流」と言った振る舞い方が強い場合があり、個々のドクターが患者の治療についてどうしても専有的な取り組み方をしてしまう傾向があります。ごまウシもその職人気質がないわけではありません。やはり、治療介入という形で対応をしていても、その介入しているテーマに対して他のドクターが手を加えたりすると、なんとなく、不愉快な気持ちになりそうになったりします。ごまウシの場合は、主治医となって治療介入しているわけではないため、むしろ介入して他のドクターに不愉快な思いをさせてしまっている側が多いかもしれませんが、お互いが信頼関係を持って普段から仲良くしているドクター同士では、やはり、頼りあい、支え合いながら一人の患者を治療していく動きになります。
いがみ合うところばかりが見えてしまうことも多かったりするのですが、このたくさんの職人気質のドクター達が集まると、いわゆる医師団として、一人ではできないほどの実力を発揮し患者を確実に治療する事ができるようになると言えます。
こんな思いを感じさせられたのは、日頃から親しくしているドクターAの一言でした。
ごまウシは、そのDr. Aとは、せん妄治療での関わりで、ごまウシがデリケートな処方パターンなどを伝授し、それを参考にしてDr.Aからすると専門外であるせん妄のコントロールを行ってくれ、感謝の言葉を頂いたりすることがあります。
今回、せん妄について話をしている中で、こんな言葉ももらいました。
「Dr.Bが感染症のことを専門的にやってくれるようになったおかげで、今回とても難しい嫌気性菌感染症が分かったのだけど、治療に不安がなかったよ。きっとDr.Bが来てから当院では感染症治療での死亡率が明らかに低下したんじゃないかな。」
ごまウシも含め、感染症治療については、全くしていないわけではありません。一般的に多くの発生を見るような感染症については、多くの医師が実際にそれこそ、昨日まで提示していた添付文書を参考にして処方をして治療をしてきています。しかし、より一層細かい治療であったり、さらには、あまり一般的に見られない感染症などは、やはり感染症の専門家がきちんと考えて処方などをしないと、うまくいかないことも多いと思います。感染症による死亡率は、どの病院でも少なからずあります。一般的な感染症に対しては、確実に治療できても、一般的ではない状況での感染症は、治療が後手後手に回り、うまくいかないうちに重症化することもあります。この重症化を回避するためには、専門家の知識がどうしても必要になります。
今回のお話は感染症のお話ではありましたが、入院治療では、入院の理由になっている疾患以外に合併する疾患というのは日常的に良くあります。例えば、骨折で入院したけど手術前検査でホルモン異常が見つかった、さらに高血圧が分かった、不整脈も見つかった…などなど合併症が同時に発見されることで、精査と治療が追加されることがあります。そこで一人のドクターが独占的にそのことをすすめていくと、やはり専門的に知識を保有していないとおおざっぱな事しか出来なくなり、それぞれに詳しいドクターに相談をし、医師団を作って診療を行った方がよっぽど安全で高水準の治療ができるものですよね。
職人気質の人たちが団結すること自体非常に難しい世界ではありますが、団結するととても水準が高まり、高品質の取り組みができる一場面を具体的に感じるきっかけとなりました。