昨日は、医薬品添付文書の事についておおよそのお話をさせて頂きました。この医薬品添付文書については、現実的には様々な課題が露呈しています。昨日の記事にある通り、添付文書は、どうしても発売元の製薬企業が主体で作成したものですので、病院で日常診療を行うに当たっての使い方に即して載せられているわけではありません。
医薬品添付文書は、昨日ご紹介させて頂いたトローチのように、紙1枚で終わっている添付文書はまずありません。豆粒のような小さな字でぎっしりと数ページにわたり書いてあることもあり、実際は、医療におけるインフォームドコンセントで言えば、この書面を全て説明した上で、同意をとらなければ、安易に医薬品の処方をしてはいけないような流れになります。しかし…あの添付文書の説明をひたすらされる診察は、みなさんいかがですか?困って訪れているはずなのに…学校の講義を聴いているような感じになってしまいますね。
致し方ないのですが、添付文書はなかなか現実的には扱いにくいことが多いです。そして、この添付文書は、改訂するのにとても苦労が多いことがあります。例えば、昨日のSPトローチの添付文書で言えば、適応疾患が、咽頭炎や口内炎と言った病名がついていますが、この病名をさらに追加しようとすると様々な治験をやり直し、その疾患で効能効果がデータとして証明できなければなりません。その治験をやり直すこともあり、適応疾患を増やすことはとても大きな壁となります。同じ事が、用法・用量についても言えます。添付文書でたたき台として提示された一番最初の治験の使い方を変えようとすると、やはり新しく治験を行う必要があります。こういったことから、添付文書で適応疾患、用法・用量の改訂はめったなことでは起こらないという事になります。そのため、この方が良いと論文などで一般的に言われていても添付文書が返られないことは日常的にあったりし、処方がとても行いにくい場合もあります。
そして、困ったことはもう一つ。製薬企業側および厚労省側は訴訟対策にこの添付文書の位置づけがあることで、副作用などについては、掲載がとても早いこととなります。ある医薬品で、一定数頻繁に副作用が認められ、厚労省に報告をした場合、厚労省から、副作用を添付文書に記載するような指示が出ます。そして、そのある医薬品の添付文書の買い手にとどまらず、時には類似薬についても添付文書の改訂を指示されることがあり、例えば抗うつ薬全般に対して改訂を求められ、多くの医薬品がそれに該当し、右へならえ的に改訂がなされることがあります。そして、その改訂は、診療の場で本来は説明をしなければならない…と言うこととなります。
日常診療では、時には敏速な対応が必要であったりします。その時に速やかに対応をしようとしてもこのマニュアルでは、速やかに対応しにくかったりと、課題はたくさんあったりします。
しかし、この添付文書通りに処方をしたりしている限り、安全性などの情報について補償をしてくれている点はあるため、安心して処方できるという実情もあることは確かですね。
いずれにしても、添付文書は、とても重要なアイテムです。みなさんも風邪薬などの市販薬においても添付文書は、きちんと参照されることをオススメ致します。