ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。

惨い退院か良い退院か

 高齢の方の入院の場合はその入院を担当する診療科だけでなく、様々な診療科がかかわることになります。ごまウシの担当する診療科は、時には治療によって発生し対応をしなければならない状況になることがあります。

 その代表的症状としてせん妄というものがあります。

 

 多くの場合は夕方ごろから、急に入院していることがわからなくなって、病棟内を徘徊したり、治療中であれば、点滴を抜いてしまったり、時には大声を張り上げたりするようなことに陥ることがあります。せん妄については以前にも触れたことがありますが、わかりやすい感覚でいえば、夢と現実が錯綜してしまっている状態で、一つの意識障害の形態といわれています。

 

 このせん妄になってしまう原因の一つに自宅と入院とで大きく環境が変わってしまうことがきっかけとなっている場合があります。この場合は、自宅に帰ると劇的に改善し、症状が旗と消えてしまうことになります。

 しかし、体調によるものであったり、痛みが原因であったり、手術などによる後遺症としての体のなんとなくしっくりしない不快感などであったり、薬が原因であったりすることもあり、これらの場合は、自宅に帰っても多くの場合改善せずに症状が残ってしまう場合があります。

 通常せん妄は、一つだけが原因というわけではなく、いくつかの理由が積み重なって、発症してしまうものといわれていることもあるので原因を一つ解決するだけでよくなる場合と、二つ、三つ解決しないと残ってしまう場合、時には、解決できない事柄が原因となっている場合があったりします。

 

 このせん妄が目立っているときに、行われることに、早期退院というものがあります。担当する診療科としては、多少傷の状態を見たい、もう少し食事がとれるようになってからが良い…と思いながらも、外来でフォローする形でもなんとかなりそうな部分もあるといったような状況の時に、派手なせん妄症状が夜中に認められたりする場合に、せん妄の原因である入院という環境を除去するために、退院を進めてしまうことがあります。

 これはもちろん一理ありますが、ちょっとした賭けに近いものがありますよね。本当にせん妄の原因に入院ストレスがあり、それがしかも大きなウェイトを占めているのであれば、退院すると普通に戻り、せん妄は一気に解消してしまう場合があります。一方で、入院が原因のウェイトとしてさほど大きくない場合は、帰ったからといって解消するわけではありません。そうすると、自宅に向かい入れた家族がショックと疲労に包まれるわけです。

 

 そこの見定めはとても重要となりますが、せん妄を解消させるための退院はその見定めをきっちりつけて行われたものなのかどうなのか…その点、ごまウシとしては、十分熟慮されたうえでなされているか、心配になってしまうところです。