入院というものはできることならば、避けたいところですよね。でも、歳を重ねていくと、どうしても身体の一部に故障を来しやすくなってきてしまうもの。そこで修理ならぬ入院というものが発生してしまうわけです。
昨今の入院は、ノスタルジックな雰囲気のある病院を除けば、DPCと言うシステムに基づいた入院料包括型のシステムで入院診療を行っているため、入院期間が延びればのびるほど入院で得られる病院の収入が下がってくるシステムになっています。そのため、救急などを蜷ている病院では、平均12日前後の入院期間でしかないため、以前のように入院したら1ヶ月か続くような入院はめったにありません。
急性期の病院では、入院期間が短いため、入院前とあとでは筋力に大きな差が出てきたとかそのような著しい変化は乏しくなってきてはいるものの、一週間でも連続でベッドで横になっていると、歩くのがおぼつかなくなるほどの筋力低下が生じてくることがあります。
そこで、筋力を保持したり増強したりするために、リハビリテーションというものが行われていることがあります。寝たきりの方、車椅子の方となった場合には、入院を担当する医師も主たる疾患にリハビリが関係ない(胆嚢炎や尿路感染などの内科疾患など)にしても、気を利かせて理学療法というリハビリを依頼をして、身体機能の低下を防ぐような鳥クムをしたりします。ただ、担当する医師によっては、その点に気づけずに、リハビリが全くオーダーされずに、そのまま入院の疾患が落ち着くまで、寝かされ続けてしまう場合も時々あります。
疾患としては、特段身体の動きに支障を来すような疾患でなくても、リハビリというのは必要であるという事は年齢を重ねれば重ねるほど高まってきます。筋力低下という観点から、理学療法はかなり気をつけてオーダーされる傾向にあると言えます。
しかし、筋力低下とともに、入院期間中は刺激がないため、認知機能まで低下しがちな所があります。
「入院して帰ってきたら認知症になっていた…」なんていうお話を耳にしたことがあるのではないかと思います。入院中の身体機能の低下に伴った認知機能の低下やせん妄と言った体調が脳に影響を与えている場合もありますが、一方で、入院により加齢に伴った認知機能の低下が一気に進んでしまう場合もあります。一週間以上ぼんやり過ごしていたら確かにその可能性は多々あります。高齢者であればあるほど、自発的に動くことも減ってきてしまいますので、さらに追い打ちをかけてしまいます。
そこで重要なのは、理学療法とともに行うべきリハビリとして作業療法というものがあります。身体の物理的な動きを司るのが理学療法に対して、道具を使ったり、細やかな手作業などを行ったりするのが作業療法です。作業療法は、いわゆる脳トレのような意味合いもあるため、高齢者の入院では、認知症があるとかないとか関係なくぜひ取り入れてもらいたいものとなります。ただ、担当医は、この作業療法については、ほぼ認識がないことが専らです。救急病院には理学療法士だけでなく作業療法士もいますが、作業療法士は、脳梗塞など脳外科や神経内科の疾患の方を集中的に介入していることが多く、内科疾患などではほとんど介入していないという実情があります。しかし、認知機能を回復させるのには作業療法が必須となります。それに、理学療法は、疾患によっては床上安静など動いてはならないというと気には行えないのですが、作業療法は、基本的には行ってはならないものがありません。強いて言えば、昏睡など行っても効果が薄い病態は存在しますが、それでもやってはいけないわけではありません。
担当医が認知機能の入院期間中の低下を意識して作業療法を導入することは決して多くありません。むしろほとんど作業療法は意識されていないことが多いと言えます。
ご家族で高齢の方が入院となった際には、ぜひ担当の医師に作業療法を導入してもらうようにお伝えいただくことをオススメ致します。救急病院では、その点が注目されていないことが多いので、一言耳に入れば、配慮してもらえます。