ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。

電子カルテの弊害

 せんじつ、当直時にとある方の看取りをさせていただきました。

 「精神科医が看取り?」などといわれそうですが、意外と多いんですよ。

 精神科病院に入院され、臨終を迎えられる方の中には、身寄りのない方もおられます。とても寂しい看取りもありますが、諸事情あり致し方ありませんが、それでも最期は、みな同じです。厳粛な気持ちで看取りを行っております。

 

 その時に、最後に行う医師の仕事が、カルテ上の退院の処置とともに、死亡診断書の発行ということになりますが、主治医でなければ、その方がどのような形で最期を迎えられたかを知るためには、医師の記載した診療録を参照することとなります。死亡診断書については、看護記録やリハビリの記録などは参考にはできず、必ず、医師の診療録及びその時の診断が診断書の情報源となります。

 しかしながら…電子カルテによる事情なのでしょうか…主治医の記録が見当たらない…。時々、検査データの貼り付けはあるものの、肝心な記載が…さらに言えば、たまに見つかる主治医の記載は、以前の記載のコピーペーストでほぼ内容に変化がないものが並ぶ…。

 

 病棟の看護師に、この方がどのような治療を受けていたかを確認するも、主治医が病棟に来ないのでわかりません…と。

 

 もちろん、死亡診断書は臨終を診た担当医が記載することには変わりはないため、書き上げましたが…

 

 身寄りがないうえに主治医も登場しないまま、最期を迎えられる…寂しいものです。

 

 電子カルテは、確かにとても便利です。手書きと違って、先ほどのお話の通り、以前のカルテ記載を再度起こして、そこに追記することも可能となります。また検索機能もあるため、過去に書いた内容を参照することもできるため、まとめたりするのにはとても便利です。それと、きちんと読める字で書いてあること。

 さらには、パソコンから指示が出せるため、病棟から離れた場所にいても、点滴の指示などが参照でき、さらに、レントゲンなどの画像を見ることもできたりします。

 

 この便利な事柄を「悪用」すると、このような事態に陥ります。

 大学時代の同期の友達が、電子カルテを利用し、病棟に行かずに、看護師からの高騰情報を参考にして、指示を発動させた若い医師が危うく事故を起こすところだったと、厳しく指導したことがあるという経験談をきいたことがあります。

 精神科の医療においては、特に看取り関係では確かに、そのようなリスクというのは限りなく少なくなりますが、しかしながら…リスクではなく、やはりぬくもりというものが大切なのではないかと思います。

 

 電子カルテの弊害は、これから先もおそらく、同じ内容であっても再び、思いついたかのように語るような気がします。便利な一方でぬくもりを失うこれからの医療…どちらへ向かっていくのでしょうか?