2回目のお話で、保険病名が何のために登場しているか分かっていただけたかと思います。
次に、医療の細分化などに関連して、業務量の膨大が発生した事による代行業務が増えたことで生じた保険病名と実際との乖離について触れたいと思います。
本来医療行為は、医師法では、すべて医師が行うこととなっていますが、病気の診断から検査、治療に至るまでのことと、診療所でしたら自営業でもあるため、レジ業務も含めて、すべて医師がまかなうこととなります。
前回登場していたレセプトについても、医師が作成することになりますが、実際はとても一人では難しくなっています。
そうそう、話は脱線しますが、レセプトですが、これは、英語で言うレセプションとは根本的に違い、Rezeptというドイツ語をカタカナ表記したもので、英語に訳すとReceiptに該当し、これをさらに日本語に訳していくと、レシート、領収書と言うことになります。
保険者の間でやりとりをしているレシートがレセプトに該当するという風に理解していただくと良いと思います。
現在の医療においては、医師だけにすべての業務を集中させることの困難さを厚生労働省も認めてくれていることにより、代行業務が認められています。この代表格が、医事課のお仕事になります。医事課のお仕事がまさにこのレセプトを作成していくこととなります。
ただし、医事科の方々は、あくまで代行業務であるため、最終的には医師の承認がいります。「暗黙の了解」ではいけません(実際は…)。
日本の医療においては、常識用語の中に「3分診療」なんていう言葉がある通り、まさに、裁くような勢いで診療が行われている現実があります。この診療の中で、もし仮にすべて医師がしているとすれば3分の間に…
患者を呼び込む、診察を行う、所見をカルテに記載する、検査を行う場合には、疑い病名を列挙して、検査項目をセレクトする、処方が必要ならば、それぞれの処方に病名診断を行い、処方箋を記載する、生活習慣などの指導を行う、指導に対して、病名をつける…などなど
無理でしょ?
そこで、患者の呼び込みは誰かにお願いできるのですが、診察や検査のオーダー、処方、さらには指導については、代理ができないため、省けません。そうすると、代行できることとしたら、病名、処方箋作成、場合によっては、カルテ記載(これをシュライバーなんて言っています)あたりになります。
気づきましたか?
そう病名付けが、代行業務になっている可能性があるという事です。いや、実際多くの場合代行業務になっています。
因みに、私が医師に成り立ての時の20年ほど前の大学病院では、レセプトの病名は、月末の研修医のとても辛いトレーニングとして、指導医とともに、チェックを入れて、病名を記入して、疑い病名、中止病名、治癒病名など一つ一つ指導を受けていました。
しかし、現在は、そのような指導を受けている研修医は全くいないと思われます。
現在は保険病名については、ほとんどが医事課が代行で入力を行い、追って、医師が承認する形をとっています。その承認についても、…時に怪しいこともあります。
医師の記録する診療録には、疾患に対してリストアップして、治療方針が立てられていますので、病名がありますが、保険病名ではなく、きちんと診察の結果や検査結果からつけた正式な診断名です。これを診療録とは別の病名リストに並べているわけではありません。
結果として、代行で入力された病名と、診療録で記録された病名とが乖離し始めるわけです。3分診療で、多くの患者を「裁いて」いる状況で月末あたりにレセプトチェックとして、医師に患者の数だけのレセプトを渡して、そこで病名の承認をもらうわけですが…カルテを開かずにチェックするのが専らなため…一致するとは限りませんよね…。
さ…始まりました、保険病名が一人歩きをし始めてしまいました。
一人歩きをし始めた保険病名が次にどのような影響を与えるか、語っていきます。