ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。

贅沢は余計な不満を作り出す

 私の所の現在の病院は、来年1月より、新築移転をすることとなっています。そろそろ引っ越しの準備をと言うことで、私自身も、医局に持ち込んだ荷物もあるので、新しい医局に割り当てられるスペースの寸法を調べてみて、驚きの事実がわかりました。

 なんと、書棚が現在のおよそ1/6まで縮小するというものです。しかも、今までは、お昼寝をしていても誰からの目も気にならないくらいに高い棚で囲まれていた訳なんだけど、歩いていれば自然と視線が合わせられるほどの高さのついたてだけしかないスペース。

 

 「なんだよ。仕事のために持ち込んだ本が全然持って行けないじゃないか…」

 「待機している時間のお昼寝が全然落ち着いて出来ないじゃないか…」

 

 などなどと、不満が、思わず暴発しそうになりましたが…。

 

 冷静に考えると、今現在の医局のここのスペースが贅沢なんだなと言う事に気づくことになります。棚は、高さ2メートルくらいのものが3つあり、確かに、現在はロッカールームがないため、そのブースで着替えるので、新しい医局はロッカールームが出来る点では助かるのですが、この3つの棚が、一気に腰の高さくらいの棚一つに減るわけですので、大変なことなのです。

 

 冷ややかに見られると、サラリーマンが職場に、占有できる机があるのは、まあまあありがちなお話であっても、大きな棚を3抱え、さらに、昼寝するだけ、椅子を倒したりするスペース(ちなみに、椅子は自分で用意したリクライニングが出来るものです)があるのは、極めて贅沢極まりない環境と言えます。

 

 実際、私が過ごした医局は、もちろん机だけ占有する環境もいくつもありました。最も広く占有できた個室を割り当てられたところもありましたが、100人を超える医師にそれぞれにそれだけの個室を提供してしまえば、病院の大半外局になってしまいますので、それだけの大所帯であれば、机だけの占有でも当たり前といった方が自然でしょう。

 そういえば、テレ朝系列で放映されているドクターXは見ている限りは、診療科ごとに部屋が与えられているものの、ここの医局員は机のみの占有。そして診療部長も個室ではなく、背後に棚がある程度の感じだったかなと思います。

 

 新しい環境は、腰くらいの棚が一つ、カートが一つ、そして机が一つ、周囲をパーティションで囲まれている(150cmほど)環境です。どう考えたって、恵まれた環境だと思いますが、贅沢すぎる環境からは、目減りしてしまうわけです。そうすると、これだけ贅沢な環境なのに、不満が発生してしまうわけです。

 私だけでなく…医局長ですら、「当初と違う、あれだけ調べて、これだけ実際変わるなんて…。」などとボヤかられるくらいです。

 

 さて、福利厚生、アメニティの社員への提供は、それぞれの職員が、気持ちよくお仕事に集中するためには、大切なものではありますが、今回の話題の教訓として、あまりに贅沢すぎるアメニティや福利厚生は、不必要な不平・不満を作り出してしまうおしれがあるという事です。

 

 今回の場合は、病院の規模拡大に伴って、医師が増加してしまうため、医局における一人一人が占有できるスペースが半減するという事ですが、そもそもが贅沢すぎたため、それでもオーナーサイドは考えてスペースを提供していても、不平・不満が勃発するわけです。

 

 職員にできるだけ快適な気持ちになってもらいたいと思い、職員が少ないときに、ふんだんに快適な環境を提供してしまうと、規模拡大を図るときには、その贅沢な環境をそのまま平行移動して、発展させなければ、充分に贅沢な環境であっても、あらぬ不満などが発生するという事を十分注意をする必要があります。

 

 事業にゆとりがあり、職員の福利厚生を拡大させるときには、ぜひ、拡大をしたときに無理となるような、潤沢な福利厚生を手配しないように、いわゆる身の丈に合わせた福利厚生に、少ししぼりぎみに、それでいて、ささやかな心地よさをしっかり体験できるように、調整しておくことが重要と言えましょう。

 

 今回の私の感じた不満は決して、贅沢で図々しいものではなく、贅沢に甘んじたために生じてしまった一般的な感触ととってもらったらよいかと思いますので、事業主のみなさんは、ぜひ、職員を大切にしつつも、贅沢な不満が発生しないように、律するところは律するようにすることが大切と想います。