黒子は、まちがっても、「ほくろ」と読んではいけません。今回の話題は、あくまで、「くろこ」です。
みなさんは、黒子と言えば、どのようなイメージをおもちでしょうか?
縁の下の力持ち、裏方のプロフェッショナル、助っ人、お手伝い、裏方…
私は、黒子は、裏方のプロという表現を使いたいと考えています。
黒子は、舞台では、真っ黒な格好をして、演者の体を支えたりして、舞台の華やかさを際立たせることが仕事ですよね。しかし、面白いことに、黒子は、実際は思いっきり見えているのです。裏舞台といいながらも表舞台で動いている姿。
黒子は決して、舞台挨拶などには立ちません。演者の名前に黒子の名前が並ぶことはありません。しかし、演者は黒子がいなければ、綺麗な演出は出来ない事でしょう。黒子に全て体を委ねていても、決して表には登場しません。
現在私の仕事は、精神科病院と総合病院とがありますが、総合病院については、決して主治医にならず、緩和ケアチームとして活動しているのみです。これが何を意味するかと言えば、決して表舞台に立つことはないという事です。現在の日本の医療において、緩和ケアは、実際の所、チームとして活動していなくても、主治医の持っている基本的な知識のみで原則的なケアは出来ます。緩和ケアとして専門的な知識を提供すれば、患者さんは、身体的および精神的苦痛のかなりを緩和することが出来ますが、緩和ケアの専門的知識を提供しなくても、入院治療や外来治療は可能です。ただ、緩和ケア部門がおおざっぱになっているだけのこと。
緩和ケアチームで活動しながら、私自身、この仕事について自問自答をする事があります。いなくても、病院は、クォリティは若干下がるかもしれないけど、機能は保持される。ただ、がん拠点病院の施設基準としては、緩和ケアチームの活動があることが前提条件であり、そのチームに精神科医が必要。ただ、それだけのため…
そんなことを考えていると、むなしくなってしまうことがあります。
しかし、緩和ケアチームは、実は、感謝してもらえることはとても多かったりします。その感謝の言葉は必ず主治医に伝えられ、心地よく治療が受けられたことを主治医に感謝するとともに、チームを介入してもらえたことに対するお礼を述べられます。
まさに、この感謝の言葉を頂くたびに、「黒子」を思い出すわけです。
緩和ケアチームは、時には、主治医に助言をしても、その助言は無視されたり、採用してもらえなかったりすることも多々あります。また、緩和ケを希望されているにもかかわらず、依頼がなされないこともあります。そのような状況を見ていると、モチベーションは低下し、せっかく依頼されても、打算的な対応をしかねない気持ちになります。
このときに、裏方は裏方でも、プロフェッショナルな、技術を持っている黒子を考えると、まさに、緩和ケアチームは、がん患者治療の黒子になります。
忘れてはいけないことです。私たちはプロです。プロであるからこそ、演者をすばらしく飾ることが出来ます。
最近の、ややモチベーションの下がった私自身を自分で励ます独り言になりました…やれやれですね…。
黒子は、とにかく、表舞台を華やかにするために、プロフェッショナルな影として活躍することです。表舞台が好評であれば、それで満足することが、黒子のプロの喜びでしょう。
この喜びを私も感じることが出来れば幸いですが…やっぱり物足りないのかしら…。