ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。

時間の概念の差

 以前からお話をしていますが、私は、いわゆる救急指定の総合病院と精神科病院をはしごとして仕事をしております。この異なった機能の二つの病院を往来していると、色々な点で、違いを感じるところがあります。もちろん、数字にすれば、誰でも気づけるのですが、実感するのはまた違います。

 今回お話をするのは時間の概念に大きな差があることです。精神科医療の中にも切迫した時間との闘いのような精神科救急というものがありますが、この精神科救急の概念と救急指定病院の救急外来とでは時間の概念に大きな隔たりがあります。その違いが受診相談や、お互いの病院同士での患者移送の時のやりとりなどに差が生じ、時にはトラブルに発展してしまっている場合もあります。最近、このトラブルの仲裁をしていることもよくあるため、このお話をさせていただこうと思っています。ただ共通しているのは、みな、必至なんです。トラブルだからといって、どちらが悪いとかではなく、理解と認識の違いによるすれ違いに過ぎません。仲が悪いなんていう解釈はしないでいただきたいと思います。

 まず、仲が良いという事について、触れてみますが、精神科病院から総合病院へ患者を移送するときに、総合病院の連携室からは、「まだ来ないのか?早くしなさい」と言う言葉を日常的にいただいてしまいます。この関係性は、もし仮に、精神科病院に勤務されている職員の方が読まれていたら、驚いてしまうことです。通常は、精神科病院から総合病院への受診相談を投げかけた場合には、「その患者が当院で色々と迷惑をかけてもらっても困るから、大丈夫か?できることならお宅で片付けられそうなら片付けてもらいたい」と言ったような言葉で投げかけられるほど、精神科患者に対して警戒心をむき出しにされます。そのため、おそらく、時間概念に差があることに気づくことはないと思われます。

 精神科病院側から、患者を総合病院へ送り出すときの準備の流れを触れていこうと思います。もちろん、それぞれに手続きは決して省略してはいけないのですが、それを同時並行でやるのか、一つ一つ順番にこなしているかに差があります。例えば、入院中の患者、あるいは外来受診中に体調不良を訴えた患者に対応をしたときに、先ずは、精神科医が対応をします。この対応に10分以上かかることも良くあるお話ではあります。その上で受診が必要だと考えられたときには、総合病院救急に直接電話を希にはしますが、日中であれば、ソーシャルワーカーを通じて、相手病院の相談員に打診を図ります。直接電話すれば、数分で受診要請を承諾されますが、相談員などを介入するとだいたい30分程度かかります。了解得られれば、そこから紹介状を作成しますが、30分ほどの時間の間に対応している精神科医は別の業務へ向かっていることが多く、受応してもらえたことをお伝えすると、他の処置を終えてから病棟などに現れ、そこから紹介状を作成します。紹介状作成には、個人差はあるけど、総合病院との差はおそらくなく早ければ、5分以内には書き上がることでしょう。そして、救急隊に電話をかけて、救急車を呼びます。救急車が到着したら、総合病院に救急隊から連絡を入れて、出発することとなります。だいたい40分以上1時間程度の時間がかかります。

 そのため、受診を打診して30分程度したところで先方から、救急隊からの連絡がないことでどうしたのか?と言った問い合わせが来ることがあり、必ず、せかされます。

 救急車が到着するまでの間には、さらに、患者家族への連絡と病状説明を電話で行うのにさらに30分以上かかることもあり、その場合は、連絡がつくまで、一時停止状態となります。

 結果的には、早ければ、40分程度遅いと数時間過ぎてしまうことがあります。これでも精神科病院としては精一杯急いで動いているつもりです。

 こんなお話を総合病院でお話をしていると、あるドクターにはこのようなことを言われました。「総合病院同士で緊急でやりとりをする場合には、一番時間がかかるのは紹介状を書いていることであとは、相談員が同時並行で進めてくれる。そのため、担当医が転院を決めたら、看護師に救急を呼んで病院調整をして、救急隊を呼ぶことを伝達し、担当医は紹介状や検査データなどをせっせとまとめに入り、印刷なども同時に相談員に依頼。相談員は同時に家族への連絡を進めていくため、結果的には、担当医が検査データなども含めて、紹介状の作成が終わる頃の10分程度の間に、救急隊のサイレンが聞こえてくるくらいの流れとなる。」この流れであれば、15分以内に相手病院への送り出しを完了してしまうことになります。

 この時点で、総合病院と精神科病院では時間の概念として3倍以上の違いがあることとなります。

 通常の外来受診については、さらに差が出てきます。受診相談をすると、早ければ、その日のうちにすぐ受診しても間に合いますが、精神科病院では、飛び込み受診を受け入れていない場合もあり、予約をして、最低1週間程度受診までに時間を要することがあります。この場合には、1時間後には受診できる一方で、受診までに数日から1週間以上かかると言うのとで大きな差が生じます。

 入院となれば、さらに時間差が出てきます。総合病院の現在の平均在院日数は13日前後で推移しています。ところが精神科病院では平均在院日数はスーパー救急の病棟や急性期治療病棟などでも平均は3ヶ月弱、療養病棟まで合わせると時には数年となることがあります。結果として5倍以上の時間概念の差が生じています。

 

 以上のように、精神科病院の診療の時間の概念は、日数単位場合によっては月数単位の動きをしているのに対して、総合病院では、時間の単位から日の単位というごく短い時間概念で動いていることが分かります。時間の価値観や意味合いに大きな差があるという事が明白となっています。

 時間はとても貴重ではあります。秒単位での時間の扱いから、あえてしっかり時間をとる月単位での動きまで様々ではありますが、事情や内容により、上手に使い分けることが肝要であると言えるかと思います。