ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。

幻聴と言われるものについて

 幻聴と言えば、代表的な統合失調症の症状として多くの方が聞いたことがある症状だと思われます。もちろん、幻聴だけが統合失調症の特徴ではなく、この病名が意味しているとおり、思考の統合性が失調しているような状態にあるため、思考が奇異な変化を遂げ、話の内容が回りくどくなり、まとまらなくなってしまうと言ったようなことも症状にあったり、様々な精神症状が伴います。

 幻聴は、もちろん、直接耳で聞いたわけでもない声や音などが聞こえてくる現象ではありますが、実は聞こえ方は、ちょっと違ったりします。何が違うのか…ちんぷんかんぷんだと思いますが、案外奥の深いところがあります。

 実際、幻聴は、純粋に統合失調症としての幻聴と、それ以外に心理ストレス下における幻聴や理解、人格的な影響により生じる幻聴、意識状態の変化による幻聴など、様々な種類が存在します。そのため、実際は聞こえ方が様々なので、その点についてお話ししてみようと思います。

 広く一般の方でもあり得る幻聴は、実は二つ存在します。一つは、「幻声」と言われるものです。これは、みなさんでも実際、経験があると思いますが、肝試しなどをしているときに、目の前の木々の葉っぱのこすれる音がまるで、どこからともなく声が聞こえてくるような感覚に襲われるもので、肝試しという極めて恐怖などの緊張状態の中でなんと言うことでもない雑音がまるで自分に対して語りかけてきているように思えてしまう現象です。「聞き間違い」「思い込み」と言われればそこまでですが、実際に感じたときには、現実との区別は難しいため、聞こえたという事に対する確信度は高いものがあります。次にあるのが思い込みから発生したりするいわゆる聞き間違いというものがあります。対人関係で悩みやすい発達障害や知的障害の方はよく経験することでもありますが、一般の方でも対人関係に深く悩んでいたりする場合には、この現象を体験することもあります。例えば、自分のことがいつも悪く言われているのではないかと気になって気になって仕方がない心配性な方が、たまたま、電車で乗り合わせた向かいの若者二人のぺちゃぺちゃとしゃべって笑っている雰囲気がまるで、自分のことをせせら笑っているように感じてしまい、悪口を言われているに違いないと確信しているうちに実際に悪口を言われたとして、暴力を振るってしまったなんて言う事件が発生したりします。この場合、時間をおいて、話を伺うと、聞き間違いであったと思われる状況が明るみになることがあります。多くの場合には、聞き間違いの前に状況設定にゆがみが発生していることが多くあります。今挙げた事例の場合は、たまたま、乗り合わせた若者二人がふざけるような笑い話をしていたと言う状況を「自分を見て笑っている」とゆがんだ解釈をし、その結果として聞こえているわけでもないおしゃべりの内容を想像しているうちに、想像が、実際にしゃべっていると確信してしまうことにつながります。そのため、その時は、具体的に悪口を言われている感覚に襲われていながら、時間を経てから聞き直すと、実際どのような悪口を言っていたのかというのがいまいち分かっていないような感じであったりします。

 この二つの幻聴と言われる現象については、実際に対象となるものがあるため、聞こえてくる方向は、その対象物あるいは遠方から、あるいは背後からと言ったような感じで聞こえてくることが多いようです。

 さて統合失調症の幻聴はどうでしょうか。統合失調症は、脳神経系の器質的なトラブルから発生する現象であるため、聴覚を経由しているものでなければ、思い込みなども含めた視覚情報を経由しているわけではありません。ただ、幻聴そのものは、不安などの心理的な影響をもろに受けることは確かであるため、不安や猜疑心などを強く影響をしているため、幻聴の内容そのものは、多くは自分を批判するような発言や、自分の考えをオウム返しするような声だったりします。自分の考えていることが声となってしまうため、その感触は、「周りに自分の考えが伝わってしまった」というような感触にあったり「見張られている」というような感覚になったりします。

 統合失調症の幻聴は、自分の思考そのものといった方が良いものが多いため、聞こえ方は、「頭の中で響く」と言ったような聞こえ方が専らとなります。ただ、聞こえ方についての確信の度合いについては、経験にもなかなか依存せず、実際に聞こえているという確信度が高く、状況的にとても矛盾があっても、聞こえた確信度は高いです。例えば、とある方の幻聴については、自宅で掃除機をかけている最中に、ふと隣のおうちの方がリビングで自分の悪口をひそひそと語り合っているなんていう風に具体的に聞こえたと言われることがあります。頭の中で響いているため、目の前で騒音を立てている掃除機よりもはっきり聞こえているのです。しかし、状況は、隣のおうちのリビングでのひそひそ話です。まさに盗聴器でイヤホンで聴いているような聞こえ方です。明らかに矛盾だらけですが、それでも聞こえたことに対しての否定は難しいです。

 最後に、重たい病気などにかかったときに発生する意識混濁状態の時に、何かしらの周囲の雑音が単調な声に聞こえたりする現象があります。これも幻声の一つではありますが、意識混濁というのがポイントとなります。聞こえる内容としては、大国は内容がなく、淡々とした呪文やお経のような声が延々と聞こえているような感じです。しかも意識混濁状態という事でもあるため、遠方から響いてくるように聞こえてくるようです。意識混濁だから、覚えていられないことも多いのですが、意識混濁でも記憶に残る場合があります。その時にはこの呪文やお経が遠くから響いてきたと記憶していることがあります。

 

 以上のように幻聴というのは、頭の中で響いている神経学的な幻聴から、心理的な影響を受けた幻声、そして聞き間違いや思い込み、そして意識混濁下の幻のような声といったものまで、実際は様々であるという事になります。