ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。インスタグラムも始めてみました。https://www.instagram.com/goma.ushi/

病気の自動診断システム

 医学の世界は、いわゆる診断基準というものがあり、概ね、その職の人が診療を行う中で、誰が行っても同じ結論に到達できるように、情報をとりまとめ、根拠あるデータに基づいて作成されたものになります。

 今から20年以上前のごまウシの学生時代においても、やはりこの診断基準というものが事細かく存在しており、それを学んで覚えることが国家試験勉強の一つのパターンとなっていたこともあります。

 

 21世紀に入る前から診断基準という形で、医学の世界は、診療技術を積み重ねてきていることもあり、診断の自動化については、随所に昔から導入されてきています。

 例えば、これはいずれも厚生労働省の際とから拾ってきた診断基準ではありますが、比較的、一般的にも知られている病気について触れてみたいと思います。

メタボの診断基準

 この基準自体は、メタボリックシンドロームという言葉が登場したときに既に作成されていた基準という事になります。健診などでは、この数値に基づき、オートメーションで診断され、健診結果にこの言葉が表記されることになっています。ごまウシにとっても恐怖の診断基準となります。

 ただし、この診断基準は数字だけであるため、ここの実情を反映していないことがあるため、その点が、過剰診断につながっていると以前から言われたことです。例えば、思いっきり筋トレしまくって腹筋を鍛え上げた人はウェスト周囲系は自ずと大きくなってしまうため、メタボに引っかかってしまうことが起こります。また、血圧についても、例えば、「前日に残業でほぼ徹夜状態が続いた上に、検診を受けに来たが待ちに待たされ、午後の業務が迫っているとき」に血圧を測れば、イライラが血圧に反映することもあります。また、興奮状態であったり、一時的なやけ食いなどをしたあとであれば、血液検査のいくつかに影響を与える可能性だって十分あるわけです。

 そのため、自動診断は得てして正しいとは限らないという事で、医師の目を通すことになりますが、さらに、AI技術が進歩すれば、そのあたりの情報収集も含めたところでの評価まで、取り込んでしまうことができれば、医師が診断する力移譲の結果で自動で診断される可能性があります。

 医師がやるのは、自動診断のための材料集めの適正判定と、結果の読み込み、把握と言ったところに限られてくるでしょうか。さらにAIが前のめりになってくれれば、メタボリックシンドロームの正確な診断のために、医師に対して「そのように患者に質問するか」という情報収集の内容を指示するようになり、さらに、診断に対して、「治療の流れ」の指示を出してくるようになる可能性があります。ここまで来ると、医師は、AI画面を見ながら、患者に質問をし、チェックリストに入れていき、そこから編み出された指示に基づいて、処方薬に承認のクリックをするのみ…といった感じになるでしょうか…。

 

 医師は、ロボットのように指示どおり従うのですのが、最終判断を人間が下すという事の責任を担うという感じにまで仕事が限定されていきますね。

 

 このようなオートメーション化は、労働人口が減っても安心の時代をもたらしてくれる一方で、仕事を奪われてしまう恐怖にはさらされてしまいますね。

 

 とは言え、こちらの診断基準は、AIではまだまだ難しいのでは…と思います。

うつ病の診断基準

 うつ病の診断基準となるわけですが、ここに自動診断の難しさが入っているのは、「主観」の項目が存在し、極めて内容が抽象的であることです。ごまウシも含め、精神科医はこのあたりの「主観」をいかに客観的に汲み取ろうと日々取り組んでいるわけですが、これをAIが…というのは難しいと思いますね。せめてできることは、疑った時点で、AIが…がチェックリストを提示し、それに回答して、うつ病の可能性を判定するもの。主観を客観化する取り組み方の進化したものが心理検査というものですが、やはり、「主観」が絡むだけに、判定は極めてオートメーション化できない部分となっています。

 

 病気の自動診断システムができるようになれば、診断と治療プランの構築のために時間を注ぐ必要がなくなり、せっかくの対面でもある部分の説明や指導と言ったところにしっかり時間が注げるようになるのでは…などと期待したくなるところですが…。将来はどのような方向に向かっていくのでしょうか?