最近の医療情勢について触れてみたいと思います。この傾向については、ごまウシが医師になった頃には既に向かいつつあるところではあったのですが、ある意味では当然と言えば当然で、またある意味では、温もりや個性が失われてきているという事になるでしょうか。
現在の医療は、標準的なものを軸として動いています。標準というのは、どこに行っても同じ治療を受けることができるというものと、治療成績も確実性を高められた治療として確立されたもののみを施すようにするというものです。ごまウシが学生時代にももちろんこのような標準治療というものがありました。その代表的な例としては、学生時代に大学の外科系の医局で目にしたものに「大腸がん取り扱い規約」「胃癌取り扱い規約」といった書物が存在していたことです。
これら取り扱い規約には、まずがんのステージについての診断基準が書いてあり、さらには、手術にて郭清していくリンパ節あるいは周辺のリンパ節に対する名称など細かくかかれており、取り扱いをガイドラインとして示すことで、外科医にどのような治療が標準的なのかというものを明瞭に示したものでした。もちろん、このガイドラインを作るまでには、様々な論文や研究、統計学的な情報などを集約した結果としてできあがったもので、特定の著名な外科医の意見が全てであると言ったようなものではありません。
この取り扱い規約の存在により、がん治療においての外科的治療は、このガイドラインに基づいて行われるため、どの外科医が行っても同じような治療の方向となり、さらに言えば、手術の手技についてもそれぞれにガイドラインや手技のマニュアルなどが存在し、不器用な外科医であってもきちんとこなせるようにマニュアル化しています。「ある人」しかできない治療というものは、どこでもできるものでもなければ、標準的なガイドラインとすることもできないため、誰でもできるという事を軸として作成されているのです。
このようなガイドラインに基づいた標準治療については、診断基準を定めた上で、その疾患に対してどのような治療をするのかを誰がやっても誤らないように道筋を用意しているというもので、医療事故やミス、場合によっては、不要な治療などを回避するにはとても重要とといえます。さらに言えば、標準治療は公開されているものなので、患者サイドからも正確な情報を入手することは一応可能となっています(専門用語や事前知識の必要性があるため、情報を得ても大きな壁がありますが)。
このガイドラインは、外科に限らずあらゆる診療科において導入されており、日進月歩で、アップデートされています。
そして、この標準治療に基づいて、いわゆる診療報酬が決められているため、保険診療で行う治療は、この標準治療出会って、それ以外の治療については、診療報酬は認められていないことになるため、保険診療ではなく、自由診療で受けることとなります。
逆に言えば、自由診療は、標準ではないため、その治療については、きちんと情報を得て、標準とは違っている部分をしっかり理解した上で、ハイリスクとして考え、その中でのハイリターンがえられるかどうかを深く考察をしていく必要があると言えます。
こういう意味では、標準治療は、全国津々浦々のどこの病院においても、最新の統計学的にも医学情報の中でも一番よいとされている治療が受けられるようになっているという事は、とても力強い意味合いがあると言えます。
本日の記事は、以上のように、標準治療による恩恵のようなお話をさせていただきました。