ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。

時間外診療に過度な期待を持たないように

 昨日は、救急車の利用についてのガイドラインを触れさせていただきました。このお話の続きになるような話題ですが、病院の時間外診療についても注意しておくべき事があることを触れさせていただきたいと思います。

 時間外診療については、各病院が勝手に名乗っているわけではありません。実は、厚生労働省が定める診療報酬の規定に時間外診療が定められて、時間外診療についての診療費についても、定められています。そのため、どこの病院に行っても時間外診療と言えば、料金は一定です(一定というのは、受診するだけでかかる受信料のことを言います。状態によっては、検査や投薬などが行われると別途保険診療を請求することとなります)。当然時間外という加算がつきますので、割高になるのは当然です。時間外診療の診療内容によっては、ぼったくりだなんて思ったりする場合もありますが、あくまで公定価格ですので、文句を言っても通じません。さらに言えば、窓口は、ほとんどの方が3割負担ですので、実際は、窓口の支払いの3倍くらいかかっていると言うことでは、値段交渉などは行わず、支払いはおとなしく済ませていただく必要があります(この点で言えば、殿様商売のように見えてしまいますが…)。

 お値段が割高なのはおわかりいただいたかと思いますが、次に、時間外診療についての厚生労働省は位置づけについては、あまり具体的には述べていないところではありますが、通常の業務時間外という観点から、診療側の姿勢はどこの病院も統一された見解を持っています。その統一見解は、特別に公開されているわけでもありませんし、書籍に書いてあるわけでもありません。私も書籍などで目にしたことがなく、研修医の時に当然のルールとして口頭で教え込まれたもので、いわゆる常識として医師はみな同じように考えているものと言う事になりますので、逆に患者側が認識していないことを理解することができなかったりします。

 さて、時間が診療について、私たちが当然のように考えている常識というものを触れさせていただきます。

 「時間外診療はその場しのぎである」…これが医師の常識となっています。時間外診療に受診をされた方がおられたら、この常識からと思われる発言を耳にしているはずです。例えば、風邪で高熱が出ていたときに、血液検査などをしてもらわなくても、お薬が出ることもあったりしますが、その時に「何かありましたら、明日の日中に病院にご連絡ください」と言った発言で診療を区切られることがあるかと思います。あるいは「症状が続くようでしたら、またご連絡ください」と言った発言が診療の終わりの言葉であったりするでしょう。

 この最後のしめの言葉は私たちにとってみると、もちろん心配をしていたりすることでもありますが、「訴訟対策」でもあります。こんな決まり文句を用意するくらいならば、「もっともっと確実に調べてくれればいいのに」と思うかもしれませんが、ここに登場するのが時間外診療の医師にとっての常識です。時間外診療は、日常の診療とは異なり、時間外のこの時間から翌日(あるいは休日明けの通常診療の時間)までの間に命に関わる大きなトラブルに発展したり、通常診療の時間までの間に危険な状態になったりしないかどうかをチェックをして、そうなる可能性が低いと考えられたらそれでよし、危険な状態になりそうであれば、入院させる、微妙ならば、自宅に帰ってもらうにしても十分注意をして様子を見るように強めに説明して帰ってもらう…この3つの判断をしているに過ぎません。

 このような考え方に基づいた診療ですので、お薬が出る、検査が行われると言った判断は、今夜しのげるか休み中をしのぐことができるかを判断するための情報集めに過ぎません。そのため、検査は、すぐに結果が出る勘弁なのものに限定され、画像検査についても急性疾患の除外にあてるだけのための検査であり画像の読影もその点に限定されます。お薬の処方についても、専ら対症療法に過ぎません(頭痛薬、解熱剤、短期間の抗生剤処方など)時には、インフルエンザのように、一発確定の迅速診断キットがあってそれがバッチリ当たる場合は、インフルエンザ治療薬を必要な分だけ処方される場合もありますが、あくまで、緊急性の有無をチェックするに過ぎません。

 このような方針で行っているのが時間外診療であるため、時間外診療で行った検査の結果説明にある「問題ありません」という言葉は、あくまで「今の時点で緊急に治療するような問題はありません」という意味であることと理解する必要があります。

 この時間外診療の検査に過信をしてしまうために、私たちが行っているようなシニア外来には、この時間外診療の結果説明を完全に素直に受け取ってしまった方々がいらっしゃいます。

 例えば、もの忘れなどを主訴としていらっしゃったときに、患者さんやご家族からまず「先日頭痛があって○○病院救急外来を受診して頭のCT検査をしてもらったら問題ないって言われた」と主張され、初診時の頭部CT検査を拒もうとされる方がおられたりします。もちろん画像データを持ってこられれば、拒んでいただいても構わないのですが、時間外診療の担当医の「問題ない」を受けて、頭部CTに「問題ない」と決めつけることはできません。説得の上、「問題ない」と言われた頭部CTを実施すると、アルツハイマー認知症などで認められる側頭葉内側部(マスコミではよく海馬と言われますが、この部位に存在します)が萎縮していることが明瞭に合ったりすることがあります。

 このような説明を行うと「○○病院の先生は問題ないって言っていたのは誤診ですか?」などと少し怒り気味な反応をされることもありますが、その場合には、「あくまで時間外診療での検査は、その時点で治療を急ぐ必要のある問題があるかどうかをチェックしているに過ぎない」と解説をし、少なくとも脳出血などすぐに治療しないといけない問題がなかったことを説明しているに過ぎないとお話をさせていただくと、時間外診療についてがっかりされることがあります。

 また、他の事例では、頭痛で時間外診療を受診され、血圧が190もあり、一方でそれ以外の血液検査や頭部CTなどの検査では異常を認められなかったため、3日分ほど血圧を下げる薬をもらったが、頭痛が治らないと言って再び時間外を受診される方がおられたりします。もうおわかりいただけるかと思いますが、結果は同じです。高血圧が同じように認められて、やはり3日分ほどの降圧薬を処方を受けるに過ぎません。その時担当医は必ず「きちんと通常の診療日に受診してください」と説明をしているはずです。慢性疾患は時間外診療の対象外です。時間が受診を繰り返していると、高血圧のような慢性疾患は十分な治療は施されることなく経過し、最終的に脳出血のような命に関わる病気を発症し、入院を要する時間外受診となってしまうわけです。

 

 結論です。時間外診療は、あくまでその場しのぎの診療で、緊急の治療を要する病気がないかどうかだけをチェックしている診療行為です。そのため、その時に行った検査は、全て、その時に治療を要する問題がないかどうかを評価するのであって、長期的なこととかを見越した分析は行われていないのです。そのため、時間外診療で、画像検査から血液検査まで様々な検査をいっぱい行ってもらったとしても、すれが長期的な健康状態を保障するものではなく、場合によっては、改めて通常診療の日に時間外診療で行った検査について、担当医に改めて説明をしてもらったりする必要がある場合もあります(通常診療は長期的なことも考えて診療を行っていますのでデータの読み直しは新たな説明の必要な部分を生み出される可能性があります)。時間外診療は、やはりあくまで時間外診療。病院機能として、緊急入院の必要性のみを判断していると考え、割り切られた診療であるから、やはり、日常の診療で長期的な健康保持のための通院をしていただくことを強くお勧めいたします。