ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。

相対的評価

 本日、たまたま病棟で業務を行っていると、またまた、看護師さんからの貴重な情報が耳に。看護師長様感謝感謝でございます。

 それは、やはり全く私のやっていることとは関係はないのですが、看護師長が、新人ナースに対して、看護観察上のことで、指導をされていたときのお話でした。患者さんの状態観察における表現方法には、様々な配慮が必要なのは確かだと思います。看護師でない私としても、看護記録において、どのようなルールがあるかは分からないにしても、誰が読んでも、同じような認識に立てるという事は重要であることは分かります。

 私たち医師の立場での相対評価や表現とすれば、検査データや、統計学的標準という物と比較して、堂だという講釈を行うことが最も一般的と言えます。例えば、肺炎の患者さんがいて、肺炎の重症状態を把握するのに、例えば、呼吸数がいくつだ、その上で酸素飽和度はいくつだ、そして、レントゲンやCTでの画像所見、血液データ上の炎症反応等などこれらを並べて、昨日と比べて堂だとかの評価をしたり、酸素飽和度や呼吸数については、標準的な呼吸数に比べてどれくらい増えているのか、増えていることを考えた上で酸素飽和度はどうなのか…等と考えたりします。標準からどれくらいずれているかという事を評価するものですが、大切なのは、個人差も含めた上で、この方が元来の健康状態から相対的にどれくらいずれているかというのを考えます。

 先ほどの検査データなどの標準値からのずれについては、個人的なものではなく、検査会社が無数の肩の検査データを参考にした基準値として設けたものなので、それと比較することは、相対評価よりは、絶対的な基準に対する比較なので絶対評価と言うべきなのかもしれません。相対評価は、それに対して、例えば、入院時の呼吸状態に比べて、現在どうなのかを比較検討するものだったりするので、例えば、シンプルに、入院時は、酸素マスクで4Lの酸素を流していて、かろうじて酸素飽和度は、91%程度で維持されていたところだったが、本日は、酸素を2Lまで減らしても、酸素飽和度は100%となっていると言ったことから、入院時に比べて、明らかに呼吸不全は改善しているという相対評価ができます。こんな感じで私たちは、数字と条件を並べて、相対的にどのように変化をしたかという事を見ていく訳なのですが、その時に重要となるのは、日常的にお世話をしてくれている看護師さんたちの看護記録だったりします。

 そこで、先ほどの話ですが、看護師長さんが、とても的確な相対評価という事について、解説をされていたので、思わず感動をしてしまったわけです。大切なのは評価というのが主観的でない事であることなのです。

 例えば、「元気そうにしている」という何気ない表現について触れてみれば、元気そうにしているのは誰が?と言うことになるのですが、これは、記録を残しているのはカルテであるため、主語は省いても大丈夫なのですが、「元気そう」の「そう」って言うのは誰が見た評価なのかというと、記録を残した看護師の評価であって、その人の実際のものとは異なる可能性があるという事です。「気丈に振る舞う」なんていう言葉がある通り、見た目だけでは判断できないこともあります。

 看護師長が言われていた例としては、「食事をしっかりとった」と言っても、これが本人にとってしっかりとっているかどうかは分かりませんよ…と言う物でした。市長は自らの主観に基づいた表現として、「私はたくさん食べる方だから、例えば、このくらいしか食べられなかったと思っていても、その食べた量を見て、他の人は、とてもたくさん食べたと評価する場合だってある。だから、数字などの基準で評価をしたり、基準に対しての変化などを意識して記録するようにすると相対評価となる」といったアドバイスをされていました。

 思わず、横から、「そうそう、あなたが、こんな大量なものは食べられないと思っても私は、これっぽっちでは、おやつにもならない等と思うかもしれないよね」などと横やりを入れそうになりました。必死に笑いをこらえながら、押さえ込み、看護師長さんが、しっかり新人さんにわかりやすく指導をしている姿を見守っておりました。

 ついつい、普段の観察の中でその場の評価を自分を基準に主観的に見てしまうことも多いですが、人を観察するときには相対評価という普遍的な基準やその人にとっての基本基準を設けた上で評価することが大切となります。

 先ほどの食事の量については、看護記録では、提供された食事量を全部摂取すれば、10割摂取という数字で表記することで、変化を見守ることができるようになっています。もちろん、その方にとってみて、病院食の10割が胃袋3割弱と言う可能性はありますが、基準を病院食とすれば、誰が見ても同じ評価となります。残念ながら10割以上については振り切ってしまっているため評価はできないものの、その場合には補足で、売店でパンを購入している…などと言った物が付記される場合があります。食欲減退は、摂食が10割未満となり、5割を切ったりすれば誰が見ても食欲減退となります。

 

 結論としては相対評価のお話ではありますが、それ以上に、いろんな方がアドバイスをしたり指導をしたりするときに、それぞれの方が、考えたアイデアでアドバイスをされます。そのアドバイスのやり方は、いろんな面で、さらなる応用に役に立つので、こういった、関係のないお話であっても耳を研ぎ澄ましておくことは重要だと思いました。