さて、MCIのところまでお話をしてきましたが、これから先は認知症という診断がつく段階となります。
ところで、前回の記事では、自覚的な感覚について説明をしてきませんでしたが、認知機能の低下が目立つにつれて、自分自身の変化を自覚する度合いが減少する傾向があります。MCIの段階および初期の認知症の段階では、自分が変化してきていることを自覚していることが多く、そのため、自身が「故障していく」という間隔が恐ろしく、不安になったり抑うつ的になったりする部分が大きくあり、パニック発作のような精神症状を呈する方もおられたりします。
しかし、その不安を感じている中で、徐々に認知機能の低下が目立ち始めると、その不安を盛んでする蚊のように回りに、「最近おかしくない?なんでできないの?」などと言った言葉を投げかけられるようになり、こころに傷を負う方が増えてきます。
MCIから、さらには、初期の認知症において始まってくる最初の課題としては、認知症に伴った心理的行動障害と言われるものです(BPSD;Behavioral and psychological symptoms of dementia)。
今までできていたことができなくなるという事については、とても恥ずかしいという間隔になるのはもちろんですが、できることなら周りに悟られたくないという思いも強く、しきりに隠したくなる心境になることが多く、周りが指摘しても頑なに否定をし、時には怒りだしてしまい、専門医への受診誘導が極めて難しくなってしまったりします。
また、理解についての崩れてしまうため、誤解をしてしまうことで家族と大げんかになってしまったり、自暴自棄になってしまったりすることがあります。大げんかの内容によっては、誤解にとどまらず被害妄想と言われるまでずれてしまうことも多くあります。
初期の認知症は、このBPSDとの戦いとも言われている段階で、関わりがとても難しくなる場合も多くあるため、対応がデリケートになり、心理的にサポーターの疲労がたまりやすい段階にあります。
BPSDについては、様々な対策のマニュアルなども発売されている実情がありますが、対応方法としては、認知症となった場合に、遭遇する、「いつも通りに行動していてもうまくいかない感覚」「きちんとしているのに発生する失敗」「周りの言っていることが分からない、筋違いに感じる。」「自分自身が霞に包まれて行くみたいで不安、恐怖を感じる。」「おかしくなっていることを周りに悟られたくない、恥ずかしい」といったような感覚を汲み取ってあげることが対応方法の土台となります。
この本人の気持ちを加味しながら対応を考えて行くと自ずとマニュアルにあるような対応になると言えます。
例えば、記憶障害に関連して、何度も聞いてきたりする場合に、「何度言わせるの!?」「さっき言ったじゃない!」なんて言う発言は禁句とも言える発言になります。とにかく、記憶にない訳なので、何回もいった気持ちがないのに、そのような突っ込みが入れば、当然混乱するわけです。そして、そのようなつっこみをしたところで、何も解決しないというもの。
このあたりを言いたくなる気持ちはサポーターにあるのはもちろんですが、そこを言わずに通り過ぎる方が平和であることは確かなのです。
せめて言えば、「さっき言ったような気がするけど、○○」のように同じ話に付き合ってあげるのだけど、どうしても言いたければこの程度のオブラートに包むくらいにとどめておくのがよいと言えます。
初期の認知症の段階では、自分でもできないと分かりつつも、できるところもあるため、頑張ってしまうところが多く、そのため、トラブルになることも多くあります。次の記事では、具体的に初期の認知症でありがちなお話をして見たいと思います。