ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。

もの忘れ外来での注意すべき発言

 ごまウシが日常の診療の中で、特に重要視している事柄の一つに、語彙数です。認知症の中で、統計学的に最も割合が多いとされているのがアルツハイマー認知症ですが、このアルツハイマー認知症は、基本的には主な症状はもの忘れ症状なのですが…実は、その他にも鍵となる症状があります。

 その中にある最も典型的なものとして失語というものがあります。

 

 失語には、様々なタイプがありますが、アルツハイマー認知症の失語のタイプは、いわゆる、自分から発せられる語彙数の減少と言うところに特徴があります。(これをロゴペニック失語などと言ったりしています。)この失語は、もちろん加齢とともにも増加しますが、この症状がかなり目立つようになります。

 しかしながら、このタイプの失語は、みなさんにおいても経験があると思いますが、たいていは上手にごまかすことができます。これを取り繕いと言ったりします。

 例えば、日常生活の中で、友人から夜の食事に誘われたときに、「何が食べたい?」と聞かれたときに、頭では思い描いたものがあったけど、とっさに言葉となって出てこなかったりした経験はありませんか?「えっと…」なんておまごついている間に、友人から「いつも好き好んでいるスンドゥブのお店でも行く?」なんて言われたときに、「そうそう、それそれ」なんていう感じで、スンドゥブがとっさに出てこなかったというようなことがこのロゴペニック失語の症状みたいなものです。病的な意味合いで言えば、これがとても目立つようになることです。

 ただし、このタイプの失語は、とっさに言葉が出てこないのであって、言葉の知識を失ったわけではありません。一度スンドゥブとでてこれば、そこからは、何度でも言えるようになるものです。

 このようなロゴペニックな失語が目立つと診察の場では、こんなやりとりになっていきます。

 

D;「好きな食べ物は何ですか?」

P;「なんでもたべます。」

D;「強いて言えば、どんなものがお好きですか?」

P;「えっと、でもなんでもたべますよ」

F;「何言っているの?好き嫌いばっかりじゃない」

D;「先ほどお昼だったかと思いますが、お昼ご飯は何を食べられました?」

P;「えっと、いろいろとあったから覚えてないね。」

 

(D;医師、P;患者、F;家族)

 

 なんていう感じになります。そこで、最後に一つ注意点です。

 

もの忘れ外来の時に、「好きな食べ物は?」

と聞かれたときに、「なんでもたべる」などと答えてしまうと

専門医からは認知症を疑われてしまいますよ!

 

 もちろん、対策と言えば、日頃から、物事は曖昧にせずに具体的な用語を使うようにするという事です。家族に、今夜はなにたべたい?と聞かれたら、とにかく具体的な言葉で言うこと。そして、家族としては、「たとえば、なにがいい?」と何でもという答えにつながらないように、くどく聞いてしまうことでもトレーニングになります。