ごまウシが普段外来診療で行うちょっといぢわるな時間見当識のチェック方法があったりします。「なんということを!」と怒られてしまいそうですが、通常見当識に問題がなければ引っかかるわけがありません。
ごまウシの外来は、ある種特殊外来となっているため、一人一人の診察時間がごまウシの診療スタイルの特性と合わせて時間が長くなってしまい、結果として、診察と診察の間隔がどうしても長く開けてしまうことが多くなります。そのため、次回の予定は?ってなったときには、2ヶ月から3ヶ月、長い方ですと6ヶ月から1年といった間隔の方までいらっしゃいます。予約としては、どうしても1ヶ月半くらいは、既に埋まってしまっていることも多く、予定を組むときには、机の上にあるカレンダーを3ヶ月前後めくる必要が出てきます。
そのため、ごまウシは、机の上のカレンダーは、最初から、3ヶ月くらい先のものを出すようにしていたりします。12月の現在は、3月のところが開いてあったりします。
そこで、例えば、時間に関して見当する力が障害されている認知症の方であった場合、ごまウシは、「今日は何月何日?」なんて言う質問をする事になるのですが、時間に対する見当識障害がある方は、当然、その時にうまく日付が答えられません。機転を利かせて診察直前にご家族が日付について予習をしてくれている場合もありますが、見当識障害というものは、予習に対しての効果が薄かったりするので、やはり答えられません。
しかし、時間の見当識障害もいわゆる本格的な障害と、日々単調な生活をしていることによって日付間隔が崩れかけている方とでは、区別がなかなか難しいところがあります。
ごまウシも、日々スケジュールを見ながら曜日ごとに業務内容が違ったりするため、自ずと曜日と時間については正確になっていくわけですが、例えば、ある日に出勤して、その時は日付はしっかり分かっていても、当直をして翌日の外来診療の時には、頭の中では日付が次の日に回っていないことがあったりします。同じように、学生さんであれば春休みや冬休みと言ったときに、毎日がお休みであったりすると日付や曜日の感覚が狂ったりすることもあるでしょう。これらの感覚の崩れと、障害としての崩れは、やはり区別する必要があります。
そこで、先ほどかいたとおり、ごまウシの机の上には、患者さんの方に向いている3ヶ月後を示したカレンダーがあります。しかもとてもわかりやすい場所に置いておくため、時間の見当識障害が強まっている患者さんは、それとなくチラリとカレンダーに目をやり…「えっと3月の…日は忘れちゃった」と答えてくれたりします。まんまとごまウシの罠にかかってしまうのです。それを見たご家族が、「さっき予習したのになんで?」となってしまうわけです。
さすがに3ヶ月もずれているカレンダーですので、単調な生活をしている方でも、あまりにも季節的にも違いすぎて、気付いてしまうもの。
時間の見当識障害は、記憶障害が乏しくても、リアルタイムの把握は難しく、その場その場の目の前の情報に左右されてしまいます。室内をとても暑くしていると、夏のような感覚になり、夏っぽい話題や時期的な話しになったり、カレンダーの違った日付に惑わされたり…。
もちろん、このように引っかかってしまうと言う事は、症状として問題であることには違いありませんが、それとなくチェックする手法として、ごまウシは診療の中でも、チラリチラリとトラップをかけていたりします。