ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。インスタグラムも始めてみました。https://www.instagram.com/goma.ushi/

高次脳機能障害の難しさ

 ごまウシの普段のお仕事で遭遇する疾患として、「高次脳機能障害」という病気が存在します。この病気は、脳梗塞脳出血くも膜下出血などの病気から、交通事故などに関係した頭部外傷にとおなった後遺症として発症するものなどがあります。

 高次能と言う言葉は、「人間として社会生活を営むために行う精神活動全般」を指し示していると言ってよいと言えます。普段の生活の中で大神的なコミュニケーションや社会生活としての行動パターンの判断など本能的ではない複雑な思考の上で決定する行動パターンを本能的な低次元的行動に対して、考察の上で発生する行動であるため高次能と言っています。これが何らかの脳の傷などにより故障してしまう現象を高次脳機能障害と言います。

 

 高次脳機能障害は、語り出すと切りがなく、それこそ、高次脳機能障害というタイトルで数百ページの書籍ができあがるくらいなので、こちらでは、おおざっぱのおおざっぱのお話で触れさせていただきますが、とても難しい事柄と向き合っていることを分かっていただけますと、ごまウシの悩みを少しでも共感してもらえるかしら…と思ったりします。

 

 高次能の行動パターンの中には、いくつかが存在しますが、おおざっぱに、パターンを触れてみたいと思います。

 

1.行動の発動の制御

 これは、意欲といったような行動につながるもので、自発的なアクションが生み出される機能です。

 これが障害されてしまうと、自発的な行動が欠落してしまうこととなります。イメージ的には、「思うことは思うのだけど、行動は伴わない」と行ったところです。この障害に近いものは高齢者の方々に見受けられることがあります。一日中、こたつに座ったままぼんやりと過ごしている姿がいい例えになります。加齢とともに自発性が低下するのも、この機能の低下と言われています。

2.行動パターンの柔軟性

 普段の生活は、ロボットのようにワンパターンな生活をしている方はおそらくいないでしょう。起きたときの感触によっては、朝からお出かけすることを考えたり、または天気が悪ければ家で過ごす過ごし方を考えたり。また、電車で目的地に向かおうと思ったら電車のダイヤが乱れていたのでバスに乗り換えたり…このような行動パターンを状況によって変化させるのがこの柔軟性です。

 この機能が障害されると、毎日が全く同じ生活パターンとなり、食事ですら毎日同じメニューとなってしまう場合があります。そして、変化が生じると行動が混乱し、どうしても同じパターンの行動をとろうとしたりします。デイサービスでいつも座っている椅子に他の人が座っていたときに、立ち往生したり、その人をどかそうとしたりしてまでその椅子に座ろうとしたりします。

3.ブレーキ制御

 これは、いわゆる我慢することです。本能的な欲求などがあった場合でも、人間は、ブレーキをすることが出来ます。ペットとして飼育している愛犬でも餌を見せて、「まて」と言って待たせることが出来ることもこのブレーキ制御のひとつの機能です。これが故障してしまうと、ブレーキがきかなくなると言う事となり、欲の赴くまま強引な行動につながってしまうことがあり、盗食や万引きといった行動につながってしまったりします。

4.社会性の制御

 ブレーキ制御にもつながるものですが、社会的な配慮が欠落してしまうことです。そのため、他社に対する関心の欠落や、自己中心的な行動をしてしまうようになってしまうことで、それが社会的な問題であることを理解できないというかなりやっかいな状況となります。

 

 ざっくりと4つの機能を説明しましたが、この障害は生活にかなり多くの課題をもたらすことは明瞭だと思います。もちろん、当の本人は、悪意などは存在しないところがあるため、説教や指導をしてもなかなかうまくいきません。そのため、高次脳機能障害に対しては、複雑な配慮の上でのリハビリによる「学習効果」を期待して取り組むことであったり、ブレーキ制御の問題については、致し方ないのですが薬物療法で調整するということとなります。

 ごまウシが頭を悩ましているのはこの薬物療法ということとなります。ブレーキをかけるわけですので、鎮静をかけてしまえば、それで片付くかと思われがちなのですが、必ずしもそうではなく、鎮静かければ生活の質そのものが悪化し、さらにリハビリにブレーキをかけてしまいます。そのため、表面的にはブレーキがかかっていないようにしながら高次能のブレーキ制御を行うということを考えながら薬物調整を行ったりしています。相反することをテーマとしているため、とても難しく微調整が必須となるわけです。

 薬物療法が最終的に全てではないのですが、リハビリに集中できる環境調整のために、薬物療法を併用しているのが現状です。

 

 高次脳機能障害のことでごまウシがなかなか悩み悩みながらいい答えが出せないものかと考えている姿がイメージつきましたでしょうか?

 お宅巡りと最近では猫様と戯れていたりしますが、日頃は、このようなお仕事をしております。