ごまウシは電車の通勤などで定期購読をしている学会誌を読んだりして過ごしていたりします。(大半はウトウトですが…。)認知症についての専門誌なので、時々、「なるほど」だったり「やっぱり」と思ったりするような論文を見つけることがあります。
学会としては、ISTAART(International Society to Advance Alzheimer's Research and Treatment)とたくさんのとても長い名前を省略したアルファベットの並ぶ学会ですが、この学会の学術雑誌に「Alzheimer's & Dementia」があります。今回はこの雑誌に登場した論文を一つご紹介致します。
今回登場したお話は、今も昔も、「認知症」について、簡単に診断してしまうドクターが多すぎることに対して警鐘を鳴らしているような論文と言ってよいと思います。診断技術のことを説いているわけではなく、この「認知症」という言葉の深刻さを理解して欲しいことを示しているものです。
https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/alz.12390
今回の雑誌は購読者でなければフルアクセスできないのでアブストラクトのご紹介となってしまいますが、ズバリまとめると、「認知症と診断されて最初の一年間に自殺してしまう危険性が確認された」という統計データを中心に分析して考察した文献です。
ごまウシが以前に語ったことがありますが、「認知症」という病名は、実際は「進行がん」の告知と同じくらい精神的にはダメージを与えうるものであるということが示されている論文と言えます。
確かに、進行がんは、「進行」という言葉がつくだけで「不治の病」となり、さらに進行性の疾患ということとなります。告知を受けた方は、「手術」「化学療法」「痛み」などの想像から始まり、きっと、吐き気で苦しむ自分の姿やカリカリに痩せてしまった自分、寝返りだけで眉間にしわを寄せて我慢する姿などをイメージしてしまうかもしれません。
現在では、そのようなことにならないような副作用の少ない化学療法や痛みなども放射線療法、上手なオピオイドを用いた疼痛管理など症状緩和や治療技術の進歩により進行していても、かなりの時間安心できる延命が可能になってきていますので、告知した医師は、その点の情報を必死に提供し、自暴自棄にならないように必死に配慮をされると思います。
ところが、「認知症」については、告知がとても軽々しい雰囲気があります。その告知に対して、家族も「ボケてしまったか」などと悩むものの、困ったと悩むのであって深刻差を感じているわけではない雰囲気があります。
しかし、告知された本人は、自分自身がどんどん壊れていき、自分が亡くなってしまう恐怖に襲われるはずです。自分の思い出がなくなる、これからの事も分からなくなる。などなど。
論文では、もの忘れを軸としたアルツハイマー型認知症の方の自殺率が高かったわけでは必ずしもないのですが、不治の病であり進行性の疾患であると言うことを考えると、告知した後のフォローを重要視しておく必要があるでしょう。
このブログを読まれているドクターがいらっしゃるとは…まず考えられませんが、通りすがりのドクターがいらっしゃいましたら、ぜひ、診断の告知後のケアをよろしくお願い致します。