ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。

せん妄治療中の傾眠

 ごまウシの治療方針として、せん妄に限らず、面足るの治療、認知症の治療などに置いて、鎮静的な薬物療法は可能な限り最小限にとどめるという事を原則としております。

 例えば、不眠症と言われるものであれば、睡眠薬の多くは鎮静であり、これらの睡眠薬をできる限り使わないように取り組んでいくと言うことであったり、不安障害に対して、定期的に抗不安薬を用いることをできる限りさけ、頓服の抗不安薬についても可能な限り使用を控えるようにしたりしています。

 認知症においても、情動不安定性に対しても鎮静作用を有する薬物療法はできるだけ控えるようにしています。おかげで、錠剤を用いた治療が少なく、細粒ばかりの治療が中心となったりします。

 

 さて、前置きは、ここまでとして、今回の話題は、せん妄の治療です。以前にも触れさせて頂きましたが、せん妄は、環境や体調などの原因を引き金に発生した意識の混濁した状態で専門的な用語で言いますと「意識狭窄」と言ったりします。意識狭窄は、この言葉の通り、意識が狭窄した状態を指し示しているものの、意味が分かりにくいのもあるため、医師国家試験の参考書で示されている意識狭窄の比喩として、演劇の舞台を緞帳を足元近くまで下ろして演劇の内容を想像する様をイメージしてくれとありました。

 ある種の意識障害ですので、明確な治療法はありません。介護の従事している職員の方々が良く耳にすると思われる薬剤に「リスパダール」などと言った薬剤がせん妄の治療に使われていると聞いたことがあるかもしれませんが、この薬剤で涎を垂らして鎮静がかかっている高齢者を目にしたこともあるかもしれません。最初に触れたとおり、せん妄は意識障害ですので、鎮静をかけたからと言って、静まっても、意識障害を改善させることは出来ません。

 

 結局の所、せん妄の治療は、せん妄の症状が消失している時期(間欠期とごまウシは表現していますが)を見計らってごくごく微量の抗精神病薬を使用することにより、科学的なアセスメントは不十分ですが、なぜか、せん妄の症状が出現しにくくなります。

 このごくごく微量の抗精神病薬を使用することにより、鎮静の伴わないせん妄発現抑止を図る事が出来ますが、不十分なことも多く、制御できていない場合があります。

 

 この十分に制御できているか出来ていないかの判断および抗精神病薬が過剰になっていないかどうかの判断については、かなり難しいものがあります。

 特に、日中に傾眠を認めている場合、非常に悩みます。

 せん妄自体、傾眠という症状があります。そのため、傾眠そのものはせん妄の症状という可能性もあります(意識障害ですから眠たいのです)。

 夜にせん妄で脳が落ち着いた睡眠がとれていなかった場合、昼夜逆転状態により、寝不足の傾眠が起こります。

 抗精神病薬を治療に用いていた場合、過剰に使用してしまった場合、もちろん日中に傾眠が訪れます。

 

 せん妄であっても傾眠、治療が過剰であっても傾眠、この区別は極めて難しいです。前日の夜に活発なせん妄症状があれば、昼夜逆転現象については、把握しやすいのですが、あまり活発ではない静かなせん妄の場合は、傾眠の原因鑑別が極めて難しくなります。

 

 減量することが吉と出るか、増量する方が吉と出るか…。なかなか判断難しいところです。

 こういうときは、ごまウシは色々とあれこれと患者さんとご家族とに聞き回りつつ、判断つかないときには、「どうする?」なんて投げてしまいます。

 自身なさ過ぎじゃないかと突っ込みが入りそうですが、治療はチームプレイなので、みんなで話し合って決めるのもありだと思うところがあり、勝手に正当化しております。

 

 せん妄の治療中の傾眠は過剰治療でも不十分治療でもありえますので、どちらなのかを見極めるため、日々の状態観察、とても大切になっています。