ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。

うつ状態は、脳をダメにする

 うつ病という病気があるのはみなさんご存じだと思います。細かいお話はともかくとして、うつ病うつ状態という状態は、一般的に認識されているとおり、気分が沈んで暗くなる病気という事になります。これが脳をダメにするという事は、以前から指摘されていることで、高齢者においては、うつが認知症を誘導するのではないかとも言われているところにあります。うつについて、改めて、見てみたいと思います。

 うつについては、基本的にはきちんとした定義があります。それは、もともと悲観主義な考え方の傾向のある方は、いつも憂鬱な考え方になってしまうため、これを病気扱いするのはちょっと無理があるため、考え方の癖による憂鬱な気分と打つの病的なものとは区別するようにしています。まず、うつという状態になると、以前にはなかったような憂鬱な考え方が湧くようになるという事です。思考の変化が起こることが条件となっており、これが2週間以上続くとこの病気の診断につながります。

 憂鬱な気分になると、その後の行動に当然ながら影響が出てきます。当然ながら、憂鬱なわけですので欲というものがことごとく減退します。精神科で言う欲というのは、意欲、食欲、性欲です。そのため、失礼なって思うかもしれないのですが、精神科では、性欲の有無を伺うことがあります。この3つの欲の減退があれば、当然活動性が低下するわけです。活動性が低下すると、あるときには、焦りが生じ、むしろイライラとしてしまう場合が発生するかもしれません。このイライラはむしろ、欲というものがそれほど低下していないときに発生すると言っても良いでしょう。実はうつで一番危険な状態は、このときなのです。憂鬱な気分で思った通りに行動ができず、焦りでカリカリしているときに感じる気持ちは、自分の無能さを感じたりするような自分に対しての否定的な気持ちです。憂鬱なわけですので、自己否定がさらに強まり、自分を抹消したくなる気持ちに傾いてしまいます。単なる憂鬱と異なり病気の憂鬱なため、そこで自分を自分の手で抹消することにブレーキがかかりにくくなってしまっているのです。この抹消する意欲が残存しているときは、あの行動をしてしまうわけです。うつの病態のなかで沈み込み始めている最初の段階と、回復途上の意欲が戻ってきたときの段階で、この焦りが強まる時期が存在するためこの時期がとても重要になります。

 うつの段階がさらに深まると、無気力状態となり、自宅にこもり、臥床して過ごすことになります。眠っているわけではないのですが、とにかく無為に過ごしてしまうこととなります。こういった状態の時の前後には、現実の見当能力まで低下してしまい、罪業妄想や貧困妄想などが発生している場合があります。罪業妄想は、特段理由は存在しないのに十分がいること自体が罪深いものであると思ってしまう思考で、自分を抹消したくなる気持ちにさせる妄想の一つです。貧困妄想は、現実にそぐわないほど惨めで貧しい気持ちになり、絶望感に沈んでしまうような妄想に溺れることです。例えば、実際は発生していないのに自己破産をしたとか、家を失ったなどと思い込んでしまったりします。

 これらの思考が、脳にとってよろしくないことは、理論的に説明しなくても、明白かと思います。脳自体は、活性が低下し、画像検査の那加では脳血流シンチなどの検査では、脳内の血流定価が発生している部位が現れてくるとも言われています。当然脳の代謝などの活動が低下します。脳の活性や代謝が落ちてくると、脳内で行われている、脳神経の新生・修復や発展(枝のばし、ネットワーク拡大など)の活動が低下することとなります。

 ここで重要なのは、歳を重ねた脳というのは、老化現象により、どんどん脳神経が壊れて言ってしまっていることです。生理的にも健常と言われている方でも、頭部の精査を行うと若い方に比べれば萎縮をしているのは紛れもない事実です。萎縮をしていても脳神経ネットワークがしっかり発展していれば、認知機能の低下というものが認められない状況となるわけですので、今のように鬱の状態になり、脳の活性が低下してしまうと、結果的には、脳の老化現象である脳神経の荒廃と若返りである脳の新生・修復・発展のスピードのバランスが崩れてしまい、脳の老化現象が顕著に目立ってしまうようになってしまうと言う事となります。

 うつにおいては、結果的には、老化現象を顕著に目立つようにさせてしまうため、年齢に合わない老化現象から認知症のような状態になってしまうこととなります。さらにうつという病態そのものは、日常生活に対する注意機能を阻害するため、集中して物事を行うことができなくなり、もの忘れなどがひどくなります。

 

 以上のことから、うつという病態は、年齢を重ねていれば、できるだけ早く対処することで、抑え込まれた脳の発展や修復・新生を解放して、認知機能の低下を防ぐことにつながります。同時に活動が上がれば、これらの発展的脳の活動が上がるため、脳の若返りにもつながります。うつのような活動性の低下した状態は、できる限り早くに解決してしまうことが重要です。