ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。

超高齢者の方へのお手伝いの頼み方

 どなたでもそうですが、80歳を超え、特に80代の後半にさしかかる頃から、たとえ認知症という雰囲気がないにしても、さすがに、日常的な活動の動作が鈍くなり、そして、失敗も増えてくることもあり、物事の能率性が著しく低下してきます。

 例えば、80代後半の女性の方で、家族同居の場合に、家族は仕事で忙しいので、夕ご飯の準備を任されている場合もあるでしょう。しかし、あるときから、家族が帰宅してもまだ作っている最中だったり、鍋が焦げていたり、連日同じメニューだったりと…徐々に、家族の方が、頼むより自分たちでやった方が良いと感じるようになることもあるでしょう。しかし、おばあちゃんのあの味噌汁の味は、家族の誰もまねができないと言った技術的な素晴らしさももちろんあるものの、全体を通すと不合格点のような状態になるといった感じもあることでしょう。

 このようなとき、家族としてはどういう判断をするでしょう?そろそろご引退いただこうかしら…なんて思うこともあるでしょうし、さらに言えば、だいぶ歳になったんだし、無理をさせない方が良いという考えからやはりご引退を勧めてしまったりすることもあるでしょうか。または逆にボケ防止のためには、やっぱりきちんとやってもらわないと…って考えることもあるでしょう。

 だいたいみなさん想像はできるかと思いますが、認知症予防の観点から言えば、当然役割を奪ってはいけないので、役割を果たしてもらうことが大切です。そのため、夕食を作ってもらうことについての役割は引き続きやってもらうことが重要でしょう。

 ただ、注意しないといけないことがあります。ご本人も、うまくできなくなってきていることに対する痔核はありますので、とてもあせったり不安になったりしていると思います。当然年のせいと思うところもありますが、今までのプロフェッショナルな技術が失われてきていることに対するショックと悲しみに苦しんでいるかもしれません。

 あれだけおいしい味噌汁みなが喜んでいたのに、「まだなの?なにしているの?」などと冷ややかな目で見られることのつらさも結構なものとなります。

 何が問題なのだろうかというのを掘り下げて考えてみることは大切です。いわゆる、加齢に伴った認知機能の低下の一つに、注意機能障害というものがあります。先ほどの話題の中に、味噌汁の味については、変わらず抜群であるという話題があったとおり、別に技術が壊れてしまっているわけではありません。夕食を作るという複合的な役割ができなくなってきているだけです。一つ一つの技術については全くぶれて折らず、その力については、まだまだ現役であると言っても良いかもしれません。一つ一つについてはきちんとできるのに、なぜできないかと言う理由は、そうです。複数のことを同時に行うことに問題があるのです。注意障害があった場合には、複数のことをするとそれぞれに対する注意力が極端に低下します。そのため、同時にこなすことが混乱の元となり、うまくいかなくなり、またやることがぬけてしまったりと、うまく達成することが困難となります。一つ一つのシングルタスクなら問題ないのにマルチタスクになった瞬間に混乱してしまいます。

 そのため、「夕食を頼んでおく」という頼み方は、現実的には難しいという事になります。しかし、ご引退という形をとった場合、自己の実存的価値観の喪失もあり、夕食を準備している時間はおそらく無為に過ごし、脳みその廃用を導いてしまうことになるでしょう。

 そこで、シングルタスクならバッチリであるのであれば、シングルタスクという形でお願いをしておくのです。

 「夜に味噌汁を作っておいて」というお願い事に絞り込むと上手にこなしてもらえる確率が一気に上がります。さらに確実性を高めておくならば、材料は、冷蔵庫にまとめてわかりやすいように収納しておくことも重要です。とにかく、頼んだことができる限りシングルタスクになるようにしていくわけです。味噌汁を作るという作業自体もマルチタスクとも言えますが、シングルタスクにしてしまえばしてしまうほど、やりがいはなくなってしまうでしょう。だから、ギリギリできる程度の複合作業の「パーツ」でお願いするようにすると、頼まれたおばあちゃんも実力を発揮でき、達成感も得られるため、引き続き野台所の役割を演じてもらえることでしょう。もちろん、一緒に作業をするというのもとても重要だと思われます。お片付けの共同作業は、場合によってはとても楽しいひとときになるかもしれません。

 ただし…時々話題になる、嫁姑問題…これは、別としておきます。

 

 本日のまとめですが、超高齢者の方に頼み後をしたり、きちんとした役割を果たしてもらうためには頼み事は基本シングルタスクという形でお願いしておきましょう。きっとすばらしい技術を発揮していただけることでしょう。