ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。インスタグラムも始めてみました。https://www.instagram.com/goma.ushi/

防塵マスク…間違いではないのですが…。

 アクセスの解析をみると検索して読んでいただける内容のトップランキングがなんと「マスク」であったことが最近分かりました。いつまでもマスクが関心事のトップであり続けるとは思いませんが、今回は、とてもびっくりするようなことに遭遇したので、そのお話をしたいと思います。

 マスクでも、そうそう、防塵マスクの装着者に出会ったんですよ。帰りの電車を駅で待っていたら、待っているホームの隣に電車が入り乗客が降りてきました。その中に防塵マスクをつけた人がいたわけです。思わず吹き出しそうになってしまったのは多分、私だけではないと思いますが、当の本人は真剣な面持ちで当たり前のように下りて階段を上っていきました。いろんな事が私の頭の中を巡りました。

 防塵マスク…私のイメージするのは、だいぶ古いアニメではありますがジブリアニメの「風の谷のナウシカ」です。あの時代は、私は、小学校から中学校あたりになるのですが、西暦2000年に向けてあと10年程度と「世紀末」と様々な騒ぎが巻き起こっていた時期です。第三次世界大戦が…ノストラダムスの大予言が…などなど。その中での「風の谷のナウシカ」人口的に開発された巨神兵というロボットにより世界が滅ぼされ、その後に虫の世界となり、その虫が死ぬとそこからカビが生え、カビの世界となり、カビの胞子などを数と人間は死んでしまうという世界で常時防毒マスク(防塵ではなかったと思いますが)をつけないといけない世界をイメージしてしまいます。

 まさに電車から降りてきた方は、いわゆる簡易式の使い捨てではなくて、しっかり密着させる、フィルターカセットを3つ使うタイプの防塵か防毒マスクでした。一瞬頭の中ではそのような、当時で言えば「世紀末」を印象づけるような、今では環境破壊によって通常では生きられない荒廃した世界をイメージさせるような雰囲気を醸し出していました。

 ご本人に確認したわけではありませんが、もちろんコロナ対策なのでしょう。ところで、このような防塵や防毒マスク、果たしてコロナ対策として不適切なのでしょうか?答えとしては、不適切…ではありません。それでは、適切なのか?…いやぁ…微妙ですねぇ…と言うのが答えになるかと思います。

 この答えは、防塵マスクの特性を調べたりすると見えてきます。防塵マスクは、通常のマスクと異なり、ゴムにより口と鼻周辺を完全に密着させ、フィルターカセットを通じてのみ呼吸をすると通気面で完全に管理された環境を作り出せる用途のために作り出された物です。そのため、きちんと装着すれば、通常のマスクと異なり、フィルター越しにしか呼吸できません。

 この時点で、多くの方が気づいたかと思いますが、防塵マスクをすると呼吸はとてもしにくくなることが分かりますよね。マスクを隙間なく装着したときに閉塞感はなかなかのものですがその閉塞感をさらに強めた物です。隙間からコロナウィルスが入り込んだりする心配はないため、通常マスクより確実に防御をしていることが分かります。そして、問題は空気を通すフィルターになります。このフィルターは様々な種類がありますので、このフィルターの空気抵抗も様々な物となります。コロナ対策として理想的なフィルター機序は、医療用マスクのN95並の物ではありますが、規格は異なりますが、防塵マスクにも同等程度の規格は存在します。

 言い換えると、きちんと密着させて装着したN95マスク並みの機能を防塵マスクは持ちうると言うことではありますが、フィルター次第では、布マスク並み、ウレタンマスク並み、不織布マスク並みの性能に落とすことも可能と言うことになります。さらに言えば、フィルターをとっちゃえば、単なるコスプレのお飾りにまで成り下がるという事です。

 以上のお話から、防塵マスクは、コロナ対策に確かに間違いではないことは分かりますよね。マスクの不確実な装着に比べ、防塵マスクは確実な装着となるため、防御性は、相対的には防塵マスクの方が上という事となります。

 欠点は、みなさん、だいたい分かってきているかと思いますが、とにかく、息苦しいことです。この息苦しいは、単なる空気抵抗だけの問題ではありません。密着度を高めると、呼気中の二酸化炭素も外に逃げにくくなりますので、マスク内は二酸化炭素で充満することとなります。私たち医療職においても、N95マスクをしっかり装着して、30分以上作業をしていると、頭がぼんやりしてきたりすることがあります。防塵マスクは、長時間使用しないことを推奨されているとおり、生理的な呼吸からするととても不健康なものとなります。そのため、通常のマスクよりも、物理的につけたり外したりを頻繁にしないといけなくなるでしょう。もし、手指消毒を十分していない場合には、手指についたコロナウィルスをなんとマスク内に持ち込んでしまうことになり、結果的に脱着によりコロナ感染症に罹患してしまう結果となりかねません。

 もう一つの欠点は、先ほど触れたとおりの見た目の問題です。この世の終わりのような状況を想像させたり、周りから見ると、防塵マスクで防がないような空気を私たちは吸っているんだという恐怖感まで与えてしまう物となります。また、マスク以上に表情が分からなくなりますので、まさにダースベーダーの正解です。

 防塵マスクは、粉塵が飛び交う工事現場や作業所にて使用する物であり、プライベートで使用するものではないため、普段の使用には周囲からもとても違和感を感じてみられてしまう物です。

 

 結論としては、防塵マスク…間違ってはいませんが…周りの風紀を乱したり、自分自身の呼吸器系の健康を害する恐れがあるため、パフォーマンスであってもそこまでの防御はオススメできません。また、パフォーマンスの場合は時に威力業務妨害で訴えられる恐れもありますので、周囲の方への配慮をお願いします。

 確実性は下がりますが、普段の生活の中では、この1年半の経験を踏まえても、不織布マスクときちんとした手指消毒が一番適切なガードになるでしょう。

 

 そして、最後に、防塵マスクを装着したその方に一言…。

 Tシャツ、短パン、草履、防毒マスク、フェイスガードなし…この組み合わせ、あまりに不自然すぎます。防塵マスクをするならば、当然フルフェースガード、遮蔽性の強いつなぎの服装、しっかりしたスニーカー、場合によっては帽子あるいはヘルメットなどといった完全防御じゃないとバランスは合いません。