ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。

プライドが邪魔をするコミュニケーション

 突然ですが、私の父親が近日脊柱管狭窄症に対する手術を受けるという事となりました。既に歳は80を越え、手術に対するリスクも高く、さらに言えば、私の専門である、入院中のせん妄などのリスクもあったりします。

 この脊柱管狭窄症の手術について父親から予定を聞いたのは、なんと全ての予定が組み込まれてからでした。家族として私も行けなかったのですが、父親は現在一人暮らし。母親は既に20年前に他界し、一人で、それなりに老後の生活を楽しみ、趣味をゴルフとして一人になってからの方がむしろ活発に動いているように見えました。そして、最近は、コロナのこともあり、会いに行くことをかなり控えていたのですが、そういえば、時々足が痛いと言ったことを言っていたのを思い出しました。80にもなれば、無理も利かないだろうと思いつつ、手術の話を聞いた最近は、痛みがひどいため、移動は車で駐車場に止めてスーパーで買い物するだけでギリギリであったという事でした。以前の姿は、毎朝4kmほどのウォーキングをしている姿がありましたが、スーパーですら徒歩で行けず車を使う状況になってしまっているのはびっくりでした。

 コロナでの近況確認もできなかったこともありますが、それ以上に相談を投げかけてくれなかったこと(私には兄がいますが、兄に対しても相談しなかったようです)がショックでした。

 私としては当然ながら、重大な決定を下すに当たって、なぜ、気兼ねなく聞かなかったのかという事を問いただしてしまうこととなりました。父親は以下のようなことを言いました。

「みんなに反対されると、いくら自分が手術すると決めても覆されると思ってね。」

ということでした。

 父親の予測の通りに兄は報告を受けて、手術のリスクを心配し猛反発したようでした。私のほうは、もちろん医療従事者であり、さらに言えば、シニア外来を行っている立場のもの、むげに反対することはせずに、手術を受けるに当たった理由が明瞭であるかどうかによって賛成反対を決めるといった姿勢をとりましたが、既に決定済みであったのでもちろん賛成という事になりました。父親の手術を受ける目的はもちろん明瞭でした。当たり前ですが、「再び歩きたい」と言うことでした。当然その気持ちを考えたら、決定を覆すなんて言う事はあり得ません。もし、今の状態をそのままにしておけば、現在のように介護サービスを使わないで自由気ままな生活には終止符を打たねばならなくなります。そして、父親のポリシーから一人暮らしを断念し、グループホームなどの施設入所の選択に進むこととなります。

 父親はとても実直でありましたが、この実直は、ポリシーとプライドがかなりがっちりと存在していることを意味します。おそらく、今回のこともそうですが、過去にも、1週間以上熱で寝込んで近隣クリニックで肺炎と診断されてしまっていたことを、忘れた頃に報告してくれたり、父親にとって弱みとなりそうな事柄は、ことごとく子供である私たち兄弟には伝達しない傾向があります。母親が他界した直後においても、気丈に振る舞いながら、元気そうに振る舞っていましたが、7回忌くらいだったかの時に、「うつ状態」になって、不眠がひどくてかかりつけ医から睡眠薬をもらっていたというお話をやはりあとになって聞きました。

 よく言われることですが(この意味合いがgender equalityに抵触するかもしれませんが)、夫婦で妻に先立たれると、夫はすぐ追いかけるように命を落としてしまうと言われるところではありますが、父親はその周囲の心配をよそに、確かに20年元気に過ごし続けています。一人で住むには広すぎる自宅は常に綺麗に整っており、元気に年に1回のペースで海外旅行にも出かけ、友人と歴史探検をしたり、ゴルフ三昧の生活をしたりと、私財をどんどん小さくしながら、豪快な活動をしてきています。

 これだけの勢いを保つためには、当然気合が必要になります。強い意志はそのまま強いプライドにもつながり、他者に頼らないことにより、日々張り詰めた生活をすることとなります。しかしながら、少し困ったことはすぐに相談する事ができず、結果的には今回のように、大切な手術をするかどうかの決定まで全く家族は知らないまますすめられてしまう結果となってしまいます。

 プライドは、人生を有意義なものとするためにはとても重要なものではありますが、プライドのために、相談ができなくなることが多くあり、コミュニケーション不足となることがとても多くあることはこのような実例を見ると確かに事実だと思います。

 

 今回は、私の父親の話題でとてもプライベートな話題ではありますが、親子のコミュニケーションもプライドが妨げとなり、コミュニケーション不足を認めざるを得ない事態となります。年齢を重ねると、このプライドはさらに硬化することもあり、父親はそのタイプでもあるかと思います。

 プライドが高い、ご両親が身近にいる方にアドバイスですが…「日頃の状態は、言葉で聞くのではなく、実際に見に行きましょう。」困りごとがあれば、親子であれば、気づける確率が高くなります。言葉を介したコミュニケーションでは伏せられてしまうこともありますので、コロナ渦とはいえ、何らかの方法でチェックを入れましょう。そのためにもZoomやLine電話など教え込んでおくと良いかと思います。新しいもの苦手であっても、プライドがあれば、苦手とは決して言わないでしょうから。拒む場合もありますが、その場合は、家族として多少はごり押しもよしでしょう。

 

【かんたんテレビ電話】LeChien(ルシアン)

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