ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。インスタグラムも始めてみました。https://www.instagram.com/goma.ushi/

動くときの勢いは大切だが…

 「こんな職場ではもうやっていられない、転職だ!」と思ったことはみなさんないでしょうか?私たちの年代においては、この考え方に至るには、相当な状況的な背景が必要であったものの、現在の社会の情勢は、そこまで重たい壁が存在しているわけではないため、この発想が導き出しやすくなったと考えられます。この壁の重さは、今までの日本の仕事社会に根深くあった、年功序列制度でしょう。現在もキャリア年数に応じて給料は伸びていく傾向は強いですが、中途でスカウト採用されるとスタートが高額となり、給料アップにつながる機会も増えてきているかと思われます。

 この点で言えば、雇用主側からすると厳しい状況かもしれませんが、雇われる側である労働者が、雇用主を選ぶことができる時代になってきたと言えます。もちろん、不景気の中では、選べるほどの雇用主がいないため、妥協せざるをえなくなってきている部分もありますが、ある程度技術を身に付けて、即戦力として役に立てると自己アピールできる人にとってみると、会社に縛られる時代はそろそろ終わりに近いと言えます。

 会社などを経営する事業主側からすると、有能な人材は、状況次第では他の事業所に奪われてしまう可能性もあるため、一度雇ってしまえば、定年まで雇い続けることができるという時代ではない点では、粒ぞろいの人材をある瞬間に失うリスクを常に持ち合わせていることとなります。ある意味では雇用主と労働者との立場がようやく平等になり始めているのかもしれません。労働者は仕事をするに当たって、自分の実力に見合った職場や自分の能力を大切にしてくれる雇用主を探す権利を有するようになり、一方で、有能な人材をためらうことなく、スカウトすることができる時代となったといった方が良いかもしれません。

 ただし、雇用主と労働者では、その仕事に対する姿勢や考え方が大きく異なります。労働者は、自分の力を遺憾なく発揮できてやりがいのある仕事を求めるという気持ちが強いのですが、雇用主側の考えは、自分の会社や事業所を大きくしたり、大きくしないにしても現状維持するためにきちんとした利益を保ち続けないといけないという、存続を意識した差し迫ったプレッシャーの元にいます。労働者は事業所を乗り換えることは実際は容易にナット言えますが、雇用主側は以前と変わらず、事業所を簡単に変えたりすることはできない時代が続いていると言えます。そのため、労働者から変えて欲しいという要望があっても、存続のために簡単に変えられないことも存在することはあるでしょう。職場で働く労働者も大切ですが、雇用主にとってみると事業所に勤める労働者と同じくらい、その事業そのものが大切となります。そのため、労働に対する考え方は大きく異なっていると言えるでしょう。

 

 さて、この中で、最初に登場した「転職」については、労働者側は、比較的容易であると言えます。しかし、容易ながらも、考えておかないといけないことは、雇用主は、必ずしも常に労働者側にいるわけではなく、やはり事業全体を見ていることでもあることです。そのため、転職を考えたときに、募集をかけている雇用主側の考えは、個人を大切にする気持ちだけでなく事業の存続を考えている点を忘れてはならないと言えます。その考え方は、転職しようと考えている職場の雇用主も同様であるという事です。言い換えれば、職場環境は、雇用主が用意するとは言え、ここに合わせた職場環境ではなく、その事業を存続させるために用意された環境と言えます。結果的には、職場環境は、雇用主に近い、遠いの位置づけによりますが、それほど大きな差はないものと考えられます。

 言い換えると、転職したからと言ってその職場が劇的に変わってやりがいに燃え上がることができる状況となるとは、必ずしも期待してはならないことです。その点をふまえて転職については、考えて行く必要があります。

 転職を考えるに際して、まずは、自分自身の仕事に対する認識を改めて再検討する必要があると考えられます。それによっては転職ではなく妥協して、仕事をしていくことをお勧めすべき場合もあるでしょう。自分のやりたい仕事については自分流に自分中心で自分のペースでやりたいという自分へのこだわりがとても強い場合は、集団業務ができないわけではないでしょうが、雇われて労働することには向いていない場合もあります。その場合は、その筋の技術者として、起業することが一つの転職になるでしょう。言い換えると労働者から雇用主(一人事業主)に変わるという事です。仕事に対する気持ちがとても強くあるのであれば、事業主のように存続を考えて自分自身を背水の陣に置き、仕事を取り組むことが大切です。

 

 結論としては、両極端のお話ではありましたが、転職は今の時代容易にできるようになりましたが、この転職については、自分の仕事に対する姿勢を充分に考えた上で、徹底するか、打算的に考えるかによって道は開かれていくと考えられます。打算的に行く場合は、今の雇用主の加護の元でしずかに、給与をいただけていることを感謝しながら過ごすのが良い場合も多いかもしれません。事業所を変えたところで環境が変わらない場合も多いです。スカウトされた場合の転職についても、環境が決して変わるわけではないことをふまえた上で、働き方および自分の仕事に対する気持ちを考えた上で取り組むべきところではないかと思います。キャリアが浅ければ浅いほど転職の気持ちも容易に沸き起こりやすいところもありますが、転職は、決して環境を変える一つのきっかけとはなりにくいことも言え、むしろ、仕事に対する考え方の強弱によっては、中途半端となり、自分を追い込んでしまいかねないことも充分気をつけていく必要があると言えます。まして、職場環境を主たる理由として転職を考えると、次の職場でも必ずや同じ経験をしかねないことだけは頭の片隅においておくべき事でしょう。転職には勢いとしての力強さも大切ですが、転職に対する冷静な見立ても大切になると言えます。