ごまウシの頭の体操

認知症、緩和ケアなどが私の仕事の専らですが、これらに限らず、私が得た知見を広く情報発信したいと思います。

老後の趣味を持つこと

 老後のことについて、みなさん、考えたことはありますか?まだまだ先のお話ではないかと思われる方、もうすぐそばに定年を待ち受けている方、既に老後の楽しみを日々満喫されている方々…様々かと思います。シニア外来をしている中で時々感じさせられることとして、老後の趣味はいかがなものかというものについて、本日は触れてみたいと思います。

 日々仕事に奔走されているとき、趣味というのは、じっくりやりたいけど、暇がなくてなかなかできずにお留守になっていることが多いかと思います。あるいは仕事こそが趣味そのものと感じて無趣味状態で日々仕事に突っ走っている方もおられることでしょう。男女平等が歌われている現代においても日本では、まだまだ女性の社会進出は、十分とは言えていない状況のため、多くの場合、女性の方は、定年の頃は自宅を中心とした生活をされているために、近所のコミュニティが充実していることが多かったりすると思いますが、一方で男性の方は、職場に日々出勤し、自宅には夜遅く帰るなどし、定年後自宅で過ごした場合、近隣のコミュニティもなく孤立しがちなところがあります。この傾向は時代とともに変わるとは思いますが現在は、やはりまだこの傾向は強く認められています。

 また、定年という時期も年金支給の時期が遅らされるなど60歳だったのが65歳になり、さらに、70歳くらいまでは雇ってもらえそうな状況が見られつつあります。この点についてはここでは議論はしませんが、いずれにしても、最終的にリタイヤする時期がやってくるわけです。

 このときに、仕事でほとんどの時間を使っていた日々の忙しい時間から、一気に仕事というものがなくなり、潤沢な時間を自分のために使えるようになるわけです。先ほど触れたように女性の方の多くは、既に自宅での過ごし方や近隣のコミュニティなど、定年の頃には、一定完成した時間の過ごし方がある場合が多いですが、男性の方の場合、定年とともに突然訪れる自由な時間、どのように過ごすかは、すべて自分自身にかかっているのですが、準備などをしていない方がかなり多く占められております。

 

 この定年後の自由時間をどのように使うのか、みなさんはイメージつきますでしょうか?温泉巡りをして、ゴルフを楽しみながら、そして、英会話教室に通って海外旅行、海外ゴルフなど楽しむ、あるいは豪華客船のクルージングを楽しむ…などなど、華々しいイメージもあるかもしれませんが、これが、何年も続くという事を想定していますでしょうか?

 このときに、大切なのが、趣味です。趣味は派手なものである必要はありません、日頃日常的に励むことができる小さな趣味のことを言っています。1日1日張りのある生活をするためには、もちろん、旅行などをプランしていくような大がかりなものも良いかと思いますが、これが毎日というのは必ず限界を迎えます。それに、人間というものは飽き性です。どんなに楽しい旅行でも長期化すると必ず飽きてくるものです。しかしこだわりの趣味というのは少し違います。同じ事柄かもしれないけどもその没頭している時間は、どんなにあっても構わないくらい注げますよね。そしてこの趣味は、アウトドアの趣味からインドアの趣味まで多岐にわたっていることが重要となります。アウトドアでは、釣りやジョギング、ウォーキングなどがあったりしますが、小さなアウトドアであれば、ガーデニングなども含まれますよね。インドアであれば、DIYと言った手作り家具などの作成の趣味からインターネット、パソコンに至るまで様々。

 これらの趣味というものを定年と同時に始めても、なかなか難しいものがあるようです。実際、いざ定年を迎えてみると、最初の1年は、活発に動けたものの、2年目からは、もぬけの殻のように、1日ぼんやりとテレビを眺めながら過ごしてしまったりする事も増えてしまったりします。相手をしてくれるはずの奥様は、近所の仲間と喫茶店におしゃべりに出かけているなど、自分だけで過ごすための時間の使い方を知らないまま定年になると、この過ごし方が分からず、ゴロゴロの生活が続いてしまいます。

 ゴロゴロをしていると、当然体力が低下をしてきます。そして、現在のようにコロナ感染症などの不愉快なお話が世の中に出回ると、さらに外出をしにくくなり、自宅にこもり続けてしまうことになります。単調で何も考えず、ただゴロゴロして過ごす日々が過ぎていくうちに、全身の筋力が衰えて廃用していくように、脳みそも廃用をして行ってしまいます。

 脳自体も加齢とともに、柔軟性が低下してきてしまっているのが定年後の状態です。新しい事柄に着手しにくい状態もあります。このような加齢とともに脳の機能が低下しやすい状況の時に脳を使わない過ごし方を日々していると、より一層脳の退化が進んでしまいます。その結果として、人の話を聞くだけの集中力などを保つことができなくなり、物覚えが悪くなったり、さらには、時間の概念もわかりにくくなり、日付も確認する習慣もなくなり、曜日すら分からないなんて言う状態に陥ることがあります。

 このような状態となり、シニア外来に認知症ではないかという事でご相談に来られる…実質連れてこられる方が多くおられます。もちろん、決して認知症ではなく、いわゆる脳にとっての廃用なのです。しかし放っておけば、当然廃用は進行し、回復自体が難しくなってしまうわけです。もちろん回復困難となれば、まさに認知症という事となります。

 

 いかがでしたか?定年後のたくさん生まれてくる時間をどのように使うのか…。このことについては、とても多くの準備が必要とされます。しかし、この楽しみにしていた老後の生活が有意義なものになるかどうかについては、既に現役時代の下準備から始まっていることを忘れてはなりません。

 さらに、気をつけなければならないことは、身体の加齢はどうしても避けられません。そうすると今まで余裕でできていたことが難しくなったりすることも出てきます。趣味に渓流釣りなど体力をかなり使うような趣味を楽しんでいらっしゃる方の中には、体力的に趣味が続けられなくて断念される方もおられることでしょう。断念したあとにその時間を埋め合わせることができる新たな趣味の準備も必要となります。趣味は、年齢と体力とともに変化していくものです。これを変えないでいようとすると、状況とともに趣味の数が減って言ってしまい、時間の過ごし方が単調化してしまいます。この点でも趣味はバリエーションに富んだものであり、常に新しい事柄に手を出すことが重要となると言えます。いつまでも若く元気であるためには、やはり、若い人と同じようにという表現が妥当かどうか微妙ですが、常に新しいことに目を向けることが大切だと思います。

 定年後に向けて、新しい趣味を是非是非みなさん、たくさん作っていきましょう。